第90話 話は違ってくる

 どうやら俺が見ない間にフレイムは戦闘狂になってしまったみたいである。


 しかしながら戦うドラゴノイドメイドに激しく萌えてしまう俺がいるのも事実であり、早くフレイムが戦う姿を見てみたいと思ってしまうのは自然な事だと俺は思う。


 そもそも今までなぜか俺ばかりが戦う羽目になっていたので今日こそは俺は後方に回ってぜひフレイムには俺の目の前で思う存分そのメイド服の丈の長いスカートを翻しながら戦ってほしい。


 そんな事を思いながら俺はフレイムの後をついて行く。


 そのフレイムは森の中であるというのに姿勢は美しく、こんなところでもメイドとしての美しさを維持しているのはぶっちゃけ化け物なのかな? と思ってしまう。


 体幹が良いとか、もはやそんなレベルではないだろう。


「ご主人様、本当に私が目的地まで抱えて飛ばなくても良いのですか?」

「あぁ、今回は自分の足で目的地まで行こうと思ってね」

「わ、わかりました。 では、もし辛くなったのならばいつでも私に申してくださいね。 すぐに抱き抱えて目的地までひとっ飛びしてあげますからっ!!」

「うん、その時はよろしくね? フレイム」

「はいっ!! 任せてくださいっ!!」


 そして、いつもとは違い森の中を歩く俺にフレイムがいつものように俺を抱えて目的地まで飛んで行って行ってあげようかと提案してくるのだが、騙されtはいけない。


 前回も、その前も、その前の前も、というか今までのクエスト全て、討伐対象がいる目の前に俺を降ろすとそのまま置き去りにしてフレイムは後方で俺を応援するという毎回同じ流れなのである。


 そして俺をどこに降ろすかはフレイム次第であるため、今回もフレイムの言葉に甘えて、歩くのよりも飛んでいった方が早いし楽だと思いお願いすると、間違いなく黄色猿のコロニーのど真ん中に降ろされて、フレイムはそれを後ろで応援するというのが容易に想像できてしまう。


 しかしながら今日の俺はそう簡単にフレイムの罠にかかるわけにはいかない。


 そんな強い意思を持つながら俺は道中フレイムと世間話に花を咲かせて三時間、ようやっと黄色猿のコロニーのど真ん中まで飛んで・・・くる事ができた。


 正直言ってフレイムの「でも目的地までだと徒歩で数日かかってしまいますよ」の言葉で俺は心が折れた。


 それはもう簡単に折れたね。


 どれほど簡単に折れたかと言うと、うまいん棒の方がまだ耐えたと思えるくらいには簡単に折れたと言えば、どれだけ簡単に折れたのか分かりやすいだろう。


 できれば俺は日帰りが良いのだ。 そのためだったらフレイムに魂だって売る。 当たり前だ。


 キャンプは憧れるがサバイバルとなると話は違ってくる。

 

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