第87話 増殖現象




 今日は久しぶりにフレイムと一緒に冒険者業のクエストをこなす事にしている。


 目標は俺が一切働かなくても生きていける環境を作る事なのだが、それまでに学園を卒業した場合は俺も少しは働かなければならないだろう。


 かといって丁稚奉公などは論外だし前世でいうところのアルバイト的な仕事に関しては支払われる賃金は最悪だ。


 基本的には七時出五時引の十時間労働で日当は四千円程。


 それでも前世と比べて娯楽も少なければ新聞テレビ、スマホにネット環境、各種サブスクにゲーム環境に交通費などの出費がないのでどちらがマシかとは一概には言えないのだが、そんなことよりも七時出五時引き一日十時間労働とか考えただけで無理無理の無理である。


 これの何が嫌なのかというと拘束時間ではない。


 誰かに見張られて管理されながら過ごす十時間という時間が嫌なのであり、逆にいうと自分のペースで作業ができる冒険者業であれば三日間クエストに行って金銭をもらうというのは大丈夫ということである。


 なので俺は最悪冒険者業でも金銭を安定して高ランク、高クエストで稼げるようにする為に定期的にこうしてフレイムと一緒にクエストをこなしに行っている。


 目的としては当然ランク上げのための実績と、冒険者押しての経験を積むことであり報酬はこの際安くても良いので報酬額ではなく先ほど述べた二つを考えて毎回クエストをフレイムに選んでもらっている。


 そして、冒険者としての実績と経験を積むためギルドへ訪れるたびにギルド内にいる冒険者のスキンヘッド率が明らかに増えて行ってるみたいである。


 なので普段からギルドに通っているフレイムならばこの摩訶不思議なスキンヘッド増殖現象の事を知っているのではないかと聞いてみる。


 万が一これが髪の毛が抜け落ちる病か何かであった場合はフレイムに被害が及ぶ前に冒険者業から遠ざけたいと、フレイムの主人としてもそう思う。


 ただ、なぜかスキンヘッドになっているのは全員男性のようなのでもしかしたらフレイム自身は大丈夫なのかもしれないのだが、それがもし感染症だったとしたならば俺やお父様やお兄様だけではなくウェストガフ家に仕えてくれている男性達の髪の毛がとんでもない事になりかねないので女性であるフレイムは大丈夫だと楽観視する事もできない。


 そしてフレイムに『ここ最近ギルドに行くたびにスキンヘッドの男性が増えたみたいなのだけど、どうしてスキンヘッドが増えているのかフレイムはその原因が何か知らない?』と聞いてみると『全て私が焼き払いました。 そして何故かその大半は伸びてきても剃っているみたいです』と教えてくれるのだが余計に意味がわからなくなってしまう。

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