第83話 ぶちのめされて終わり
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風の噂ではここタリム領にとんでもなく美しく、そして強いドラゴノイドの女性冒険者がいるというのは聞いていて、前々から気になっていた。
しかもそのドラゴノイドの女性冒険者はソロで活動しており、それだけではなく奴隷であると言うではないか。
その噂を聞いた俺は、もしこの話が本当であれば彼女を助けなければと強く思った。
いくら力に自信があるドラゴノイドだとしても女性がソロで冒険者を続けていくと言うのは流石に酷な話である上に、冒険者をやっている彼女はその事に気づいているはずである。
しかしながら未だにソロで続けていると言う事は、やはり彼女が奴隷であるが故に『ソロで活動しろ』と命令されているに違いない。
そんな話は許されてなるものか
そして、絶対に彼女を奴隷から解放させてやると息巻いてこうしてタリム領に来て一週間が過ぎたのだっが、噂のとんでもなく美しいドラゴノイドの女性冒険者はタリム領の冒険者ギルドに現れなかった。
やはり、噂は噂でしかないのか?
そう思い始めたその時、ギルド内が急に騒然とし始めるではないか。
一体何事かと思って周囲を見渡すと、皆ギルドの入り口へ視線を向けており、その先にはまさに噂通りのとんでもなく美しいドラゴノイドの女性の姿がそこにあった。
そして、彼女の姿は冒険者とは思えないメイド服の格好をしており、首には奴隷の証である首輪が付けられている。
どれだけその姿に見惚れていただろうか。
息を呑む美しさと言うのはあの女性のような事を言うのであろう。
しかしいつまでも見惚れているわけにはいかない。
俺がここ、タリム領まできた意味を思い出した俺はギルドの受付カウンターでギルド職員の女性と会話をしているドラゴノイドの女性へと話しかける為に向かっていく。
「おい坊主、どこへ行くつもりだ? まさかフレイムの嬢ちゃんの所じゃぁねぇだろうな?」
「それがどうした?」
そして、そんな俺の腕を古参っぽい冒険者のおっさんに捕まれて俺の歩みを止められる。
その事に一瞬だけイラッとしたのだが、おっさんのおかげで彼女の名前が『フレイム』というのが分かった嬉しさの方が優ってしまい、先ほど感じた苛立ちは綺麗に霧散していった。
「どうせナンパか何かだろう。 やめときな。 今まで幾度となく様々な理由で、それこそ『無理矢理冒険者をさせられているに違いないっ!! 俺が彼女を奴隷から解放させてやるっ!!』と息巻いた奴も何人も見てきたが、全員ぶちのめされて終わりだ」
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