第82話 野暮ってもんだ
とりあえず俺のボキャブラリーではうまくこの美味しさを表現することができないのがもどかしい。
なんだろう? フルーツばかり食べた穴熊は肉の中で一番美味しいとかいう話を聞いたことがあるので多分それだと思う。
うん、多分この肉の獣もフルーツばかり食べていたに違いない。 そもそも穴熊を食べたことないのだが、そんな細かいことはどうでも良いのだ。
とにかくそれくらい美味しいということが伝われば良い。
そして何かの肉の串焼きを一気に平らげると、次はお皿に取り分けられた野菜炒めである。
これに関しては食べる前から美味いと分かるほどにいい香りを漂わせて俺の食欲をそそる。
そして、野菜炒めも俺の期待を裏切る事なく当然のように美味しいではないか。
この野菜炒めにしても食べた事のない味なので、どう表現すれば良いのか分からないのだが、とりあえず言えることは東南アジアに行ったら食べれそうな味付けの野菜炒めといえば伝わるだろか。 俺、前世では東南アジアどころか日本すら出た事もないのだけど、そこを指摘するのは野暮ってもんだ。
心と心で通じ合えばそれで良いのである。 食べたことがあるだとか行ったことがあるだとかは心で通じ合う事ができない奴が使う最後の手段でしかない。
「なるほど……海沿いの町や村とはまた違った美味しさがありますね」
そしてフレイも俺と同様に満足そうな感想を述べるので見てみると両手一杯に料理を抱えて貪り食っているではないか。
どうやらお小遣いを使って追加で自分の分も購入していたようである。
言ってくれれば俺が代わりに出したのにと言うと『これは私の趣味みたいなものですから。 それにご主人様に支払わせたとなると申し訳なさで料理の味が感じなくなってしまいそうなので、大変ありがたい提案なのですが遠慮させてくださいっ』と言われれば折れるしかないだろう。
それにフレイムの言わんとしている事もなんとなく理解はできるしな。
しかし、それにしてもよくそんな量を食えるなと思えるほど惚れ惚れする食いっぷりである。 その細い体のどこに入っているのやら。 流石現役冒険者というところか。
ちなみに料理に関してはフレイムだけではなく全員からも好評で、フレイムがわざわざ勧めてくる理由も分かるほどには美味しかったし、大満足と言えよう。
そして同じ国でも場所が違えばこうも料理の味が変わるのかと、ある意味その事を知れたのは大きな収穫だったと言えよう。
これからスローライフ生活が盤石となった時にはフランと一緒に帝国中の、可能であれば他国も含めてその土地の郷土料理を観光がてら食べて周るというのもあ理だな、と将来やりたい事の項目に新たにグルメ旅行を追加するのであった。
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