第81話 叫んでしまいそうになる

「では、せっかくですからフランのおすすめを買って行きましょうか。 量が多いものは一人分だけ買って後で人数分に分けて食べましょう」


 そして俺はフランがおすすめであるという屋台の料理を人数分(量が多いものは一人前だけ)購入して河川敷まで持ち寄るとキースがどこからともなくテーブルと椅子を設置した後に人数分の取り皿を出して買った野菜炒めなどを取り分けていく。


 なんだろうか? みるみるキースがセバス化していっているのだが、とりあえずどうやってテーブルと椅子を出したのか興味があるので教えてほしい。


 セバスもキースも『こればかりはローレンス様と言えども教えられません』と言って教えてくれないのだ。


 そしてキースはそのままの勢いで冷えた緑茶をコップに注ぎ始める。 それも当然のように人数分である。


 ぶっちゃけこの芸があれば執事じゃなくても手品師として食っていけるのではなかろうか? と本気で思えてしまうほどには見惚れる手際である。


 ちなみにフレイムとマリアンヌはそんなキースを見て自分も何か俺の役に立ちたいのかソワソワと手持ち無沙汰にしていたのだが、その珍しい姿が可愛らしく思えたというのは黙ってておこう。


 ちなみにキースの妹のメアリーはマリアンヌの側仕えとしてのウェストガフ家で修行の真っ最中なのでまだまだ兄の様にはいかないようである。


 まぁ、遊び盛りの年頃なので兄のキースと比べれば集中力が持続する時間も短く、勤務時間も今の所半日程度なので、後ない状態で妹の事もある上に一日でも早く一人前になりたいとセバスさんに直談判した為一日中執事として生活を強いられている兄と比べられるのも酷というものだろう。


 とりあえずメアリーに関してはマリアンヌの遊び相手件話し相手として良き友人なってくれればそれで良いと思っている。


 そんなメアリーがメイド服のスカートの中からぎこちない動きでクッションを出してマリアンヌが座る椅子に置いている姿が見える。


 ちなみにスカートの中もどうなっているのか聞いてみたのだが、やはり教えてもらえなかった。


「では、食べましょうか。 いただきます」


  そして全ての準備が整い、全員が席につき料理も配膳された事を見て俺は早速目の前の料理を食べ始める。


 とりあえず気になっているのは何かの肉の串焼きである。


 メジャーな食べなれている肉なのか、それともマイナーな肉であるのか、マイナーな肉であれば何の肉なのか想像を膨らませながら、まるで気分だけは美食家気取りで一口食べてみる。


 すると今までに、前世ですら食べた事のない肉の味が広がり、そして美味い。 思わず『う・ま・い・ぞぉぉぉおおおおっ!!』と叫んでしまいそうになるくらいには美味い。

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