第80話 日常を見なれてしまうと忘れがち

 そしてフランの案内のもと町を散策していくのだが、外に出て歩いてみると屋台が意外と多い事に気が付く。


 これならば様々な食べ物を少しずつ買って食べ歩きできるので観光に適していると言えよう。

 

 むしろだからこそフランはそれ込みでこの町を選んだというのもあるのだろう。


 とりあえずぱっと見で見た感じ粉物を薄く焼いて好みの具材を包んで食べるクレープのようなものから鶏肉や獣の肉を鉄板で焼いたものや油で揚げたものが売られており、そのどれもが美味しそうな匂いを漂わせている。


 獣の肉に関しては獣特有の臭みなどが気になる所なのだが、例え獣臭さがあったとしてもこうして屋台で提供されるくらいには食べれる程度の臭みであろう。


 後は魚醬のような何かと現地の調味料で味付けした、鉄板の上で調理されたものもある。


 魚醬とソース、そして肉が焼ける香りといのもまた食欲がそそられるのと同時にこれならば獣臭さも気にならないのかもしれない。


 ちなみにフラン曰くここら辺に出している屋台は全て屋台の後ろにある定食屋が経営しているらしく、勝手に屋台を出して問題になるケースも多いのだと言う。


 そしてそれら問題をフランの父親であるダニエルさん、又はダニエルさんの部下が毎回解決しているというのだから以外であった。


 その事をフランに聞いてみると、フラン曰く「詳しい事は良く分からないのですけれども『土地の利用などの揉め事をほったらかしてしまうと後々面倒くさい者達が勝手に仲裁役をしはじめ、最終的に土地の権利や仲裁した報酬を主張し始めるため面倒だからと手を抜くことは出来ない大事な仕事だ』と申しておりましたわ」と説明してくれる。


 その話を聞いてどこの世界も同じような問題は起きるのだな、と思うのと同時に、それを未然に防ぐために動いているダニエルさんは、リーシャさんやフランとの普段の日常を見なれてしまうと忘れがちなのだが、やはり優秀であると再確認する。


 そして、領主の目が行き届いているからこそ治安も良く、こうしてフランが日の下を堂々と歩ける程には安全な町なのだろう。


「それで、ローレンス様っ! ここの野菜炒めが美味しいんですのっ!! あと、あそこのも美味しいですし、あっちの店も美味しいですわっ!!」


 それと、この町を見るとダニエルさんが俺のレシピにあそこまで価値を見出してくれたり、帝都でレストランを経営している理由がなんとなく分かるような気がしてくるだけでなく、間違いなくダニエルさんの代だけではなくクヴィスト家が昔から食文化を大切にしてきたのだというのがこの町からも窺えて来る。

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