第76話 裏で結託
そんな、幸せそうに眠るフランにしがみ付かれている腕を起こさないように優しく解き、俺はベッドから抜け出すことに成功する。
ただ、一言言える事はフランは十歳にしては発育が良かった、という事である。
しかしながらやはりそこはまだ十歳。
見た目に関してはどう足掻いても子供であるため欲情するなどという事はないのが唯一の救いだったと言えよう。
それでも後五、六年経った時に同じ事をされたら少しばかりやばかったのかもしれないな、と思う。
ちなみに後十七年経って二十七歳になったフランであったのならば理性を抑える事はできなかった事だろう。
その事からも女性に対する好みの年齢は前世で死んだ時の年齢に引っ張られているの事がわかる。
普通で有れば同年代に異性を感じて色恋をするはずであるし、前世の俺の初恋も十一歳の小学五年生の頃同じクラスの女の子であったことからも前世に引っ張られていることが窺える。
そんな事を思いながらカーテンを開けて窓を開けると、今日もいい天気で、窓から入ってくる風には微かに潮の香りがする。
実家や前世とは違う朝の空気を堪能しつつ俺は日課である鍛錬をしに行こうとタオルを手に取り廊下へと出る。
「おはようローレンス君。 昨日はよく寝れたかね?」
「お、おはようございます。 ペンドラ伯爵様」
そして扉を開けたとき、ダニエルさんが満面の笑みで立っていた。
その目は『逃がさないよ』と語っており、俺は何がきっかけで逃げ道を塞がってしまうのか分からないため慎重に、失礼のないよう爵位名で挨拶を返す。
こちらが侯爵家といえども俺自身はまだまだ十歳の子供で、さらに次男であるため相手を敬う事でデメリットはないだろう。
「おや? どうしたのかね、ローレンス君。 今日はやけに他人行儀じゃないか。 おじさんは寂しいなぁ。 いつものように『ダニエルさん』と呼んでくれてもいいのだよ? そう、家族のようにね」
そしてダニエルさんは満面の笑みで答えるのだが、その笑顔がとてつもなく怖い。
「それとも何かね? 私の娘と一夜を共にして他人行儀な態度を取るということは、私の娘とは遊びだったという事かね?」
「ち、違いますっ!! フランさんとは真剣に婚約者としてお付き合いをさせていただいておりますっ!!」
そもそも俺は確かに眠る時には部屋の鍵を閉めて寝ていたはずであるにも関わらず、なんでフランが俺の隣で眠っていたのか。
それはおそらくダニエルさんとフランが裏で結託して俺に罠を張ったからであろう。
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