第27話 感無量



 そしてお見合いは無事成功してフランは上機嫌で馬車を大人しく乗っていたのだが、その道中で今回の優先事項が『ドラゴノイドの使用人を貸して頂き空を飛んでもらう為にローレンスと婚約する』から『ローレンスと婚約して、可能であればドラゴノイドの使用人を貸して頂き空を飛んでもらう』と変化してしまい、結果ローレンスと婚約できた嬉しさで『ドラゴノイドの使用人を貸して頂き空を飛んでもらう』事を約束し忘れた事に気付いたフランは父親に「今すぐ戻ってくくださいましっ!!」と、理由を説明して引き返すように言うのだが、父親から「次に彼に会う口実に使うってのはどうだい?」と言われて我がお父様は天才なのでは?と思いながら早速それをネタにローレンスの家へ行く為の手紙を書き始めるのであった。





 フランと婚約を結んだ日から一週間が経った。


 婚約してしまった事を今更どうこう悩んでも仕方がないので意識を切り替える事にする。


 どうせ今更覆す事も出来ないのならばそれに対して時間を割くのは勿体無いと言うものである。


 そして、次に俺が考えている事なのだがフレイムの冒険者登録である。


 ついにこの時が来たかと俺は感無量で、ここまで育ってくれたフレイムを一日中労ってやりたい程だ。


「こちらが、ウェストガフ様が言っていたドラゴノイドの奴隷ですか……」

「左様。 我が息子が丹精込めて育て上げた一級品でもある。 おそらくその強さは間違いなくここタリム領の冒険者ギルドの中で一番強い者と同等、またはそれ以上の実力がある事は私が保証しよう」


 そして今俺とお父様、そして本日の主役であるフレイムは前日に訪れる事を伝えていた為冒険者ギルドの応接室まで通され、手紙に書いていた事を再度お父様が口頭で説明していた。


 ちなみにお父様がギルドマスター宛に渡した手紙には、今日は俺の奴隷を冒険者登録をしに行く事、そしてその冒険者登録をするフレイムという女性奴隷は強さ的には間違いなくタリム領一であり帝国の中でもトップクラスの実力者であること、それらを考慮して冒険者ランクをある程度上のランキングから登録してほしい事、を丁寧に説明したものを送っていた。


 そのためお父様がフレイムの実力について話してもギルドマスターは驚きはしないものの、代わりに値踏みするかのようにフレイムを見ているのが分かる。


「ふむ、確かに彼女の種族はドラゴノイドと優秀な種族ではあるものの、だからと言ってそれだけではやって行けないのがこの世界であるが……よし、良いだろう。 いくら悩んだところで彼女の実力を見ない事には始まらない」

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