第26話 軽く見ていた
◆
おかしい。
フランを愛でながら三時間程家の庭を散策して帰ってくると俺の両親とフランの両親が揃って俺達を出迎えてくれていた。
ここまでは良いのだが、そのあと俺の母親が「ローレンスは、フランちゃんの事をどう思っているのかしら?」と言われたので「とても可愛らしくて素敵な女性だと思いますっ!」と返事をしただけである。
その後フランにも似たような質問をされ「わたくしはこの方が良いですわっ!!」と返事を返すと、何故か俺とフランとの婚約が決まったのだ。
もし、今回フランが我が家に来た理由がお見合いであると予め知っていたら俺はあそこまでフランを可愛がることも無く、近所に住む子供程度の接し方でとどめていた筈である。
「お、お父様っ!!」
「なんだい? ローレンス」
「僕は今日フランとお見合いをするだなんて一言も聞いておりませんっ!」
流石にフラン本人がいる前で『フランとの婚約を無効にして欲しい』などとはいえる訳もなく、俺はお父様へ今回のお見合いは無効であると遠回しに訴える事にする。
「ローレンスは、フランと婚約をするのは嫌なのかい?」
だというのにお父様は俺がせっかく遠回しに伝えたにも拘らずフランの目の前で今回の婚約は嫌なのかと聞いて来るではないか。
嵌められた。
お父様は間違いなく俺の気持ちを察しており、だからこそ断れないようなズルい言い方で聞き返してきているのだと、そう思った瞬間には全てが手遅れであった。
ほんま、汚い大人やでっ!
と、前世の某動画投稿者の祭りくじ動画の発言のような言葉を頭の中で吐いたところで現状況が好転する訳も無く、むしろ俺が黙ってしまっているせいでフランの表情がみるみる内に今にも泣きそうな表情へと変わって行くではないか。
「そ、そんな事はないですよっ! 僕はフランが良いと思いますっ!!」
「そうか、ならフランとローレンスは両想いだなっ」
そして俺がフランの泣き顔に耐えきれずに婚約者はフランが良いと告げるとお父様は俺とフランが両想いなどとほざきながら笑うではないか。
そんなお父様にジト目で訴えるも全く効いていないようである。
しかしながら例え今俺に対して恋愛感情を抱いているのだとしてもそれはおままごとの延長線上だろう。
きっと大人になるにつれて、ちゃんと好きになった男性ができるだろうしそれまでの期間だけの婚約者ごっこだと思えば良いだろうと、この時の俺はフランの一途さを軽く見ていたのであった。
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