第28話 高級店一泊お泊りコース
そしてギルドマスターは、いくら頭の中で考えてもフレイムの実力を見ない事には何も決められないと、実技試験を行う事にしたようである。
その為俺達は今回冒険者登録をするフレイムを連れて冒険者ギルドの裏にある修練場へと移動する。
「ちょっとギルドマスター、急に呼び出して一体何なんっすか? 俺こう見えても一週間かかった討伐依頼がやっと終わって帰ってきたばっかっすから普通にこのまま帰りたいんすけど?」
するとそこには、ギルドマスターが部下を使って呼び寄せていた一人の冒険者であろう男性が既におり、その男性が言うには長期の依頼から帰ったばかりだというではないか。
え? そんな人をわざわざ呼び寄せるとか普通にブラック企業臭がして前世のトラウマが掘り起こされるんですけど?
「報酬は弾む」
「ピンク街の高級店一泊お泊りコース」
「…………仕方ない。 それで良いだろう」
「うひょーっ!! さすがギルドマスターっすねっ!! いやぁー言ってみるもんっすわっ!」
そう思ったのだ、気のせいだろう。
コイツはあれだ。 本業は手を抜いて残業で稼ぐタイプの奴だ。
働き方については本人がそれで納得をしており無理強いさえしてなければそれで別に良いのだが、何だかんだ言ってまだ六歳である
「さて、俺の相手は誰だっ!? まさかこのクソガキじゃないっすよねっ!? って、痛っ!?」
「馬鹿者っ!! そのお方はここタリム領を治める領主様の息子だぞっ!! お前が今日模擬戦をしてもらうのはそちらのドラゴノイドのメイド、フレイムだ馬鹿野郎っ!! それに相手が誰であれ礼儀は欠かすなといつも言っておろうがっ!!」
開口一番クソガキと言われた事に少しばかり腹は立ったものの、本人からは悪気などは一切感じられない上に俺の代わりにギルドマスターにこっ酷く怒られているので良しとしよう。
恐らくギルドマスターが怒っているのはコイツを助ける為でもあるだろうし、何だかんだでギルドマスターが助けるくらいには見込みがあり、悪い奴でもないのだろう。
だからこそギルドマスターは貴族の代わりに叱り、貴族自ら手を下すのという最悪の事態から防ぐために『私が代わりにキツく叱るので、なにとぞここは穏便に』というアピールの為に俺達に見えるように怒鳴り叱ったのである。
貴族であるお父様や俺にはその意味は通じており、ある種の社交辞令と分かっているのでギルドマスターが俺達の前で怒ってくれた時点でこの件は終わりなのだが、いつも笑顔のフレイムから表情が消えているのが気になる。
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