第10話 初めての奴隷
「は、はい。 一名おりますが……とてもではないですが販売できるものではございません。 誠に申し訳ないのですが──」
「構わない。 必要であれば何かあった場合は全てこちらの責任でありそちらには危害を加えないし噂話も一切しないという魔術契約を結んでも良い。 何なら相場以上の値段をつけても良いと思っている」
「……しょ、少々お待ち下さい。 流石にあの者を販売することは最悪弊社の築き上げてきた物が崩れ去ってしまう可能性がございますので一度オーナーへ連絡を入れて確認してきます」
そしてオークスは公爵当主であるお父様と、自身の勤めている会社の理念との間で板挟みになってしまい自分では判断できないと思ったのかオーナーへ連絡を入れて相談してくると言うと、サラと一緒に一旦部屋から出ていく。
「ローレンス」
「どうしました? お父様」
「例えばだが、スキルが上がればその効果も上がる事は分かったのだが、ローレンスの持っているスキル【回復】はレベルが上がると現状維持から完治に進み出すというのは、欠損部位なども再生はできたりするのか?」
「あ、はい。 欠損部位が再生できるようになるまでにはかなりの年月が必要なのですが」
「そうか……。 とりあえず、もしこれでローレンスの話が本当だとすれば一族門外不出、それも最重要の部類に位置付ける事になるな」
自分としてはこの情報は広めた方が良い気もするのだが、この世界の根底を覆してしまう程の情報ともなると逆に表に出さない方が良い事の方が多いだろう。
「大変お待たせいたしました。 オーナーと話しあった結果、先程提示していただきました契約をし、例え何があったとしても表に広めないという条件であれば販売しても良いという許しをいただきました。 つきましてはこちらの書類にサインをお願いします」
そしてどうやらオーナーから奴隷の販売許可が出たと言う事で、お父様が書類を読み終えた後ペンに魔力を込めてサインをして、それをオークスが丁寧に仕舞う。
「では、案内いたしますので私について来てください」
そしてオークスに案内された部屋。
そこには生きているかどうかも分からないほど衰弱したドラゴノイドの女性がベッドに寝かされていた。
「見ての通りでございます。 彼女は元魔術師協会会長であったフルーダから魔臓を抜き取られており、明日死んでもおかしくない状況です。 しつこいようですが、それでも本当に宜しいのでしょうか?」
「構わない。 言い値で買い取ろう」
オークスは今の奴隷の現状を見てもまだ買いますか? と最終確認をし、お父様がそれに意思は変わらない旨を伝える。
そしてこの日、俺に初めての奴隷ができたのであった。
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