第11話 銅貨10枚



 お父様に奴隷を買ってもらった俺は早速昏睡状態の彼女と奴隷契約を済ませて、帰りの馬車の中でドラゴノイドの彼女の手を握りスキル【回復】を常時発動状態にする。


 この俺の初めての奴隷となったドラゴノイドの彼女なのだが、オークス曰く出来損ないとして親に捨てられたらしく、その為か値段も訳ありにしてはほぼほぼ無料に近かった。


 むしろ彼女にかかる金銭面での負担が無くなるため本当に無料でも構わないらしいのだが、この世界でも只より高いものは無いということで売買契約にて正式にここの奴隷商から購入したという確かな証拠を作る意味でも銅貨十枚での販売となった。


 また、彼女の値段が安い理由の一つに、奇跡的に回復できたとしても元々が無能である為本来の価値そのものは低いというのも大きいのだろう。


 それが逆に元魔術師協会のフルーダからすれば良質なドラゴノイドの魔蔵を手に入れるという最大のメリットとなってしまったようである。


 因みにフルーダが彼女を購入した金額が銀貨五枚と、基本的には金貨三十枚は軽く超えてくるドラゴノイドの奴隷の価格としては破格の安さである。


 何とも聞くだけで不幸すぎる彼女の人生に、無意識のうちに彼女の手を握る手に力が入ると共に、俺の元で絶対に生まれてきて良かったと言わせてやると誓う。


 しかし、このドラゴノイドなのだが首筋や顔の頬の一部、手足の先にドラゴンのような鱗、お尻には大きな尻尾と背中には立派な翼が生えており、今まさに生死を彷徨っているであろう彼女には悪いのだが人間の形以外はまさにドラゴンといった体付きの彼女を見ると異世界に来たんだという高揚感が沸々と湧き上がってくる。


 それにしても、スキルのレベルを上げる為とはいえ常時発動させるというのは想像以上に疲れる。


 これでは確かに、一度使えば効果は発動するためわざわざスキル【回復】を発動させ続けると言う人物が今まで現れなかったのも分かる気がする。


 結局はスキル【聖女】または【神官】までの繋ぎ感覚でしか用途が無かったのだろう。


 これでは折角スキル【回復】を取得できたとしても熟練度は一向に上がらないわけである。


 そして、俺は力を使い果たしたのかいつの間にか眠っていたらしい。


 お父様に軽く揺さぶられてようやく馬車が家に着いた事に気づく。


「お疲れ様。 とりあえず今日は休みなさい」

「はい、お父様。 そうさせてもらいます。 彼女は僕の部屋へ新しいベッドと共に運んで来ていただけるとありがたいです」


 

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