4話 死神の疑惑

 確かスーツの男は私の命を、死骸となった海王に吹き込むために、私と取引をしたと

言っていたが、コイツが海王を殺した奴だと

いうのか…?だが海王は生前最強だった筈…

いや、カロンはさっき、海王

、まるで海王が弱いかの様に言っていたが、結局、海王の実力はどの程度のモノなんだ…?


「コイツは今は何処に居る?一度会ってみた

 いのだが…」


 「…無理だよ、彼はもう亡くなってる」


「亡くなった…?何で、一体誰にやられた

  んだ!?」


「アンタ…本当に何も知らないの?王国アクロの人間にこの世界についての説明位は

受けてる筈でしょ?」


彼女は呆れた顔でそう言ってみせた、何やら

大切な事を私は知らされていないらしい…私は生き返る事が出来るなら、過酷な世界でも無い限り喜んで転生出来るからな、どうせどんな問題も、魔王を瞬殺できる私には些細な事だと思うのだが…


「アンタを異世界ココに転生させた奴、

 一体どんな奴だった?説明もできない出来損ないなんて王国アクロの恥だもの、私

が注意しといてあげるから」


「カロンさんは知らないのか…?その、私

 を転生させた人の事を」


 「…アンタがここに来る1年前に、王国が

  御触れを出したの、王国アクロに被害が出ない

  なら手段は構わないから、誰か魔王を倒

  してくれー!ってね?それで昨日、王国

  に伝書鳩で報せが届いて、魔王城は陥落

  した、復活した海王の手によって…だが

  彼は防御魔法が使えないので、次の魔王

  の誕生に備えて、出来るだけ強い護衛を

  ネスリンに寄越して欲しいって書

  かれてたものだから、私が禁術で駆けつ

  けたんだけど、手紙には送り主の名前が書

  かれて無かったから…」


 この森はネスリンと言うのか…ここに流れている川は三途の川だとかスーツの男が言っていたが、あれは本当だったのか…?まあ聞いてみなければ分からないが、どうやらスーツ男の目的は魔王討伐で間違いないらしい。


「顔色の悪いスーツを着た男だったぞ?三途の川の水を吸ったせいで森の植物に目が生えたとか、本当ホントかどうか分からんが、海王が最強だったとか、後は勇者が

弱っちい———」


「え、弱っちい?何て言ったの?」


「と、とんでもございません!カロンさんは

 優秀な勇者だと言ってました!!」


「ふーん?海王が最強だったってのは良く

 分かんないけど、人を見る目あるわね、

 そのスーツ男」


危なかった…しっかり聴かれていたら、また

あのバーニングなんちゃらを撃たれるところだった。


「そ、それで海王が最強だって話がよく分からないというのは…?」


「海王は禁術が使えたし、名のある魔法

 使いでもあったけど、本来、魔王を倒せ

 る程の実力なんて持ち合わせて無かった

 のよ、だからそのスーツ男は、アナタに嘘でもついたんじゃない?理由は分からないけど」


「しかし…それなら、なんで私は魔王を倒す事が出来たんだ…?」


 「何かを仕組まれたのかも…そのスーツ男、本当に誰なのかしら?他に分かりやすい特徴とか無かったの?」


 特徴…?特徴かぁ、何か彼自身の事について言っていた気がするけど、何と言っていた

だろうか…?


《あー、私実は死神のはしくれでして、耐久力には自信があります、魔法を使えば神や王レベルの者でも無い限り、生贄なしで生き返らせる事が出来ますから、私、割と優秀なんですよ?》※1話


 「自分の事を死神って言っていたような…あと、人を生贄無しで生き返らせる事が出来ると言ってた気も…!」


「…死神で、人を生き返らせる事が出来る

 奴なら、候補は大分絞られてくるわね、

 死神はネスリン辺りをよくうろついてるし、運が良ければまた会えるかも」


 「いや、いつでも会えるぞ、スーツ男が、犬飼

  さんに何かあったら、こちらに私の姿

  を強く念じて下さい、そうすればすぐ

  に会えますよ…って、水晶の塊を渡し

  てくれたんだ、さっきのカロンさんの

  攻撃で何処かに飛んでいったけど」


「もしかして、水晶って紫色のやつ…?」


「え?ああ、そうだけど」


「…ゴメン、多分私が壊しちゃった」





   

 


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