3話 勇者は♂♀どっち?
「————————ッツ!!?」
彼は赤面して黙り込んでしまった。ちょっと
感情を揺さぶっただけのつもりが、私は踏み
込んではいけない領域に入ってしまったらしいが…さて、どうしようか?
「私は…オネエじゃない!!!」
彼はさっきまで寝ていた私の眠気を吹き飛ばす程の怒号を発してみせた、森の植物達が
驚き、一斉に目を瞑る。
「えっ?」
「私は…ただの女!!」
———————女?
彼はそう言った後、懐から杖を取り出し軽く
振ってみせた、その瞬間、辺りに霧が立ち込めて、彼は勢いよくその中に走って行った。
「カロンさん!?何を———」
辺りには霧が充満しており、彼の姿どころか
森の木草すら見えなくなってしまった。彼を怒らせたのは私であり、私が彼に謝らなくて
はいけない事は重々承知しているものの、私にはどうも、彼にかける言葉が思いつけな
い…
「すみません、さっきのはちょっとからかってみただけで————」
「このクソっタレ野郎ぉおお!!」
また怒号が辺りに響いたかと思うと、私
の正面の霧が裂け、その中から赤いカウボーイハットとスーツを身につけた少女が、私
に向かって杖を振りかぶって来た、顔は
先程の男と瓜二つだが、体格も服装も別物だ、もしかすると
「バーニングクラッチ!!」
気づけば私のすぐ目の前に、巨大な炎の塊が
迫っていた、彼が少女になったのかと思えば、彼にいきなりオネエ呼ばわりした事への復讐をされるとは…いや、コレはさっき彼が
言っていた…対決なのか?
こっちは異世界に飛ばされたばかりで、まだ脳が状況を理解しきれていないというのに
とは…
というか、彼女の姿はどれが本当のものなんだ?なんらかの魔法で姿を変えたらしいが、写真の勇者か、闇深眼帯男か、
それとも—————
「…………やった!確実にやったぁあ!!」
…やられてないです、むしろピンピンしてま
す…とは言えないよな、彼女の言葉を耳にする限り、私への恨みは相当なモノらしいが…
「カロンさんは、私の事を恨んでいるんだよな?なのに何故、私の護衛役なんか—」
「…うわっ!?え?なんでアンタ、そんなに平気なのよ…!さっきの技、確かに喰らった筈でしょ!!」
話が噛み合わないな…だが確かに私は
さっきの炎を喰らった筈だが…ギリギリ反射的に攻撃魔法で打ち消したのか?何かを放った感覚は無かったのに、何故…いや、今は
それどころじゃない。
「…それは置いといて、質問に答えて下さい」
「出来るわけ無い…さっきのは国内でも最高レベルの禁術なのよ?それを弾き返すなんて…なんで、海の王ごときにあんな芸当が出来るのよ…!
待てよ…コイツ今、海の王ごときって言ったか?異世界で最初に会ったスーツ
の男は、海の王の事を生前は異世界で最強だったと言っていたが…あの男か、彼女が何か隠している…?
「その話、もう少し詳しくしてくれる?
勝負なら後からいくらでもするから」
「えっ、本当か!勝負…受けてくれるん
だな!?」
「ああ、もちろん」
彼女の顔からはいつのまにか眼帯が消え、そこからキラキラと輝いた目がのぞいていた、この様子から見て、彼女の悪意の無い、ただ単に私に挑戦したいという意思がうかがえた、そしてどうやら、彼女は体格に加えて視力も魔法で変化させられるようだが、禁術というのはそんなに便利なものなのか…?
「早速だけど、君はさっきから変身する
時に魔法を使っているようだが、アレも
禁術というモノなのか?」
「…答えるけど、絶対に他の奴に言わないで
ね?」
「ああ」
「アンタは他所の世界から転生して来たらし
いから知らないだろうけど、この国では勇者
の才能が有っても、女なら魔法使いとかサポート役にまわれって決まりがあって、私は
ソレのせいで自分の勇者の才能を活かせなくて、代わりに魔法使いになる為に、有名な魔法使いだった
教わりに行ったの、丁度10年前にね?」
「成程、それで?」
…それで事情を話したら、禁術なら男にも女にもなれるって
「…じゃあコイツは誰だ?」
スーツの男に貰った一枚の写真を彼女に見せる、彼女の変身体が眼帯の男なら、この人物
が勇者な
は……
「…彼は私の一代前の勇者、確か
した張本人ね」
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