第8話 兵士・イリアス 4 スミルナと対話

アルキノは酒を皆に振る舞っていた。緊張した空気がわずかに緩む。皆の暗い顔がわずかに明るくなる。


イリアスも少しだけ酒をもらい、一気に飲んだ。そしてスミルナのもとへと向かった。


スミルナは大部屋に一人で座っていた。


「スミルナさん。話があります。政府との交渉は難航していると聞きました。要求を下げて、妥協したほうがよいのではないでしょうか」


「それはできない。それで俺たちが、俺達の利益のためだけに立ち上がったことになる。大義がなくなる」


「大義のために死ぬんですか」


「俺達は兵士だ。死ぬ可能性があっても優先されることがある」


「俺達はもう兵士じゃありません。皆、大義のためだけに戦っているんじゃないんです。明日の温かい食事や寝床のために戦ってるんです」


「今内輪もめをしている場合じゃない。お前も他の皆もわかっていて参加したはずだ」


「皆に本当の計画をすべて話していたんですか」


スミルナの表情は変わらなかった。


「もし隠している事があるなら、ついていく義理はありません」


スミルナの返答はない。イリアスは踵を返して部屋から出ていこうとした。


スミルナの手が動いた。イリアスの背中に向かって攻撃を放った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る