第3話 内務大臣・ホーマー 1 平和はときに新たな問題を生む

大きな問題が去り、新しい問題がやってきた。去ったのは戦争だ。魔王国との長い戦争が終結した。新しい問題は国内の問題だ。


内務大臣のホーマーは部下からの報告を受けた。街道の保守は軍と兵士の仕事である。魔物が現れれば撃退し、道や橋が壊れていれば修復する。終戦により兵士を減らした結果、街道の保守がままならないのだ。


「兵士の数は増やせん。食料品の輸送経路を優先的に保守するように通達しろ」


他にも問題は溢れている。職を失った兵士が国中に溢れているのだ。元兵士の多くは仕事を見つけられていない。そんな元兵士たちが反乱を起こしたという報告を受けた。


兵士が不満を持っているのはわかっていた。給料の給付が遅れているからだ。ならば給料を支払えば不満は減る。しかしそれができない。無い袖は振れない。国庫は空っぽだ。


ホーマーは独り言のようにブツブツと恨み節を言った。


「そもそもこうなることは目に見えていたんだ。だから私は停戦に反対だった。それなのに首相が……自分の政治家人生を「勝利」で締めくくりたいがために……何も得ることのない停戦だ。勝利だと喧伝しているが、何も勝利などしていないじゃないか。それでも兵士は勝利したと思っている。愚かな奴らだ……」


ホーマーには野心があった。次期首相になるという野心だ。しかしこのまま戦後処理の不満が高まれば、その線もなくなるかもしれない。ホーマーは何よりもそのことを心配していた。

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