4.扉の向こうへ
強い光が目を刺激する。
私は思わず顔を腕で覆った。
「開いた!」
「開いたー!」
猫たちが、開いた扉を潜り抜けていく気配を感じた。
「まっ……!」
私は眩しさに耐えて必死で目を開け、その姿を追う。
見てみると、扉の向こうはーー
草原だった。
息をのむほどに、
とても、とてもきれいなところだった。
一面に草花のじゅうたんが広がり、奥には森や山が見える。
すごくいい匂いがする。何かの花の匂いかな?
右前方にあるのは、湖のようだ。
湖面に光がきらきらと反射している。
湖には浮島があるようで、そこはまた何か雰囲気が違う美しさがある。
「わあ……」
「ぬしー!」
「すごいね、広いね!」
はしゃぎまわる猫たち。こんなに広い草原なんて、私も初めてだ。気持ちはわかる。
「広い、ね。」
「ひろいねー」
「あっちのほう何かな!」
短い芝生もあるが、丈の高い草花もある。小さい猫は、すぐにうもれて見えなくなってしまいそうだ。
「あっち、湖があるけど、落ちたら大変だから行かないでね。」
「あっちー?」
「どこどこ?」
「二人には見えないかな?」
「あっちー……あーっあれなにー?」
「どしたの?」
「見てーなんかヒラヒラ飛んでるー!」
「ほんと! きれい!」
きれいな色のちょうちょうがたくさん飛んでいるようだ。
「すごいー飛んでるーひらひらー」
「うわぁ」
「あっ、待って……!」
猫たちはちょうちょうが気になるのか、どんどん進んでいってしまう。
「ねえ! そんなに向こうに行かないで!」
「あははー! 楽しいー!」
「こんな広いとこ初めてだね!」
それに気を取られているみたいで、私の声に気づかない。
いつも家の中で生活している猫たちは、初めての広い空間、広い草原、ふわふわ飛ぶちょうちょうに大興奮のようだ。
でもーー
「モニカ! ピオ! 待って!」
「あははははー……」
「あはははは……」
2匹は、行ってしまう。
「待って、待って!!」
もう、見えなくなってしまう。
「ねえ! モニカ! ピオ!!」
最後に見えていた、草花の間をうろうろするしっぽもーー
消えた。
「モニカっ! ピオっ!!」
ハッと気づくと、私の足元には、暗い穴が開いていた。
「ーーっ!」
そしてその真っ黒な穴に落ちる感覚がしてーー
「ぶはっ!」
気がつくと、いつも寝ているベッドの上にいた。
「……え?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます