前略お父さん。

さわやかな５月の風が心地よく感じられるこの頃ですが、天国では楽しくやっていますか？

私は最近、念願叶って猫と話すことができるようになりました。

思っていたのとは少し違いましたが、それでもやっぱりとてもかわいいです。

お父さんは、猫はうるさいから、とあまり好きそうじゃありませんでしたね。にゃーにゃー鳴くとよく「うるさい」って追い払っていましたね。

でも、猫のトイレ掃除やブラッシングをしてくれていたことを覚えています。

天国でも、前に実家で飼っていたあの子と一緒にいるかな？

仲よくしてくれていると嬉しいです。

そうそう、最近話すようになった猫たちが、奇妙なことを言うのです。

今まで私が気づかなかったところに、扉がある――と。

何の扉なのか気になるというけれど、そんなところに扉があるわけない、と私も見に行ったのですが、なんと、今まで見えていなかったのか元々無かったのかわかりませんが、猫が言う通りキッチンの壁に、扉が見えるのです。

突然見え始めた扉に驚いて、中はまだ確認できていません。

でも、そんな謎扉の先に、良い物なんてあるとは思えませんよね？　開けたくなんてありませんよね？

あの扉はきっと、開けるとお化けとか幽霊とか化け物的な何かが出てくるようになっているのでは……と、そう思います。

でも、もし天国に繋がっていたら、お父さんに会えるかもしれませんね。

お父さん、私はあの扉を開けるべきなのでしょうか？

開けたらすごい化け物が出てきてしまうのでしょうか？

天国ではなく地獄に繋がっていたら、鬼とか出てくるのでしょうか？

もし何か、怖いことが起こったら、いったいどうしたらいいのでしょう？

いつも通り、旦那さんに丸投げでいいですか？

頼りっぱなしの寄りかかりっぱなしで、いいですか？

そんなことを言ったらお父さんはきっと、少しは自分で何とかしようと努力しなさい、って言うんでしょうね。

娘は、相変わらず他力本願です。

だけど、そもそも旦那さんはホラーとかゾンビとか血を見るのも駄目なので、そこは私が頑張らないといけなさそうです。

実際そんなに怖いことが起こったら、ゾンビゲームとか映画は好きだけど、私ひとりで対処出来るとは思えません。

どうか、怖い物が出てきませんように、お父さんも祈っていてください。

扉を開けたらそこは、不思議の国でしたくらいでお願いします、と。

お父さんも、天国とはいえ風邪など召されませんようお体にお気をつけくださいね。

～娘より～

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