2.扉って何?
「ところでさーぬしー。」
「ぬし、なのね……ママーとかがよかったよ。」
「ぬしー、あの扉って、なんなのー?」
ある日猫たちが言い出した。
言葉がわからないときは、私には子供がいるから、それと合わせて猫にも自分をママと言っていたので、そう認識してもらっていると思っていた。しかし、なぜか呼び名は『ぬし』だった。なぜ。
しかし猫が言い出した扉、とは?
我が家は三階建ての狭小住宅。扉の数はそんなにない。
なんなの?ということは、中を知らない、ということだろうか。
猫が入ったことのない部屋なんてないから不思議に思った。
「扉?」
「そうー。」
「私もなんだろって思ってた!」
「どこの扉?」
聞いてみた。
パパの部屋の扉。
書庫の扉。
子供部屋の扉。
私たちの寝室の扉。
お風呂? トイレ?
どれも、猫たちが知っている扉だろう。
しかし、猫が言う扉は、なんと私も知らない扉のことだった。
「あれー。ごはん置いてくれるとこ。キッチンのー。」
「そうそう。ごはんの横の扉。」
「ごはんの、横の扉……?」
そんなところに扉はないし、部屋もない。
いつの間にかリフォームされたってこともない。
「わからない?」
「こっちこっちー。」
猫たちについてキッチンに行くと――
「扉……。」
あったのだ。見たことのない扉が。
「ねー? 扉でしょー?」
「あったでしょ?」
「え、これ……ずっとある?」
「うん! ずっとあるよ!」
「あるよねー。」
「誰も開けないから気になってた!」
「ねー。」
ずっとある。
ここにずっとあった扉……。
でも――
私は初めて気づいたよ?
三階建ての4LDKだよこの家は。一階と三階に二部屋ずつ、二階リビングの4LDKだよこの家は。
キッチン横になんの部屋があるっていうんだい猫たちよ。
いや、でも、今まで気づかなかったけど確かにある。
扉が、ある。
「なんで?」
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