うちの猫がしゃべった。
井上佳
1.猫がしゃべった!
私は猫を飼っている。
里親として引き取った姉妹の白猫が2匹。
モニカとピオだ。
もともと猫が好きで、小さい頃からずっと生活の中には猫がいた。
だからもちろん、思ったことはある。
『猫と話せたらいいな――』
「でも、実際聞いてみるとこんな感じなんだね」
「え? へんかな?!」
「うーん。思っていたことと違うっていうか……」
「えー? 違うのー?」
「もっとこう、さ? ママ大好きー! すきすきー! みたいな感じかと思ってた。」
「まあ、好きか嫌いかで言ったら好きだよ! ごはんくれるし!」
「そうだよー。ごはんくれるから好きだよー。」
「ごはん。ごはんね。そうだよね。」
ある日突然、猫の言葉がわかるようになった。
しかも猫にも私の言葉がわかるらしい。
嬉しいけど、やっぱりちょっと、思ってたのと違うかなーって。
『好きにゃ』とか、『おひざ乗りたいにゃ!』『かまってかまって!』とかいってまとわりついていた感じを想像していたものだから、現実に打ちのめされている。わりとドライなんだなって。
そりゃあ、年がら年中好き好き言ってるわけじゃ、ないか。
「でも何で急に話せるようになったんだろうね?」
「私も不思議!」
「わたしもー。」
原因は不明だった。
でも
それでもーー
ほんとうに、嬉しい。
「ねえ、聞いてみたかったことがあるんだけど。」
「えー」
「なになに!」
間延びした感じで話すのがピオで、元気いっぱいなのがモニカだ。
「子どもたち、どう?」
「どうー?」
「どうどう!」
「えっと、好き?」
「好きー? こどもー……べつにー」
「こわい! 急にうごくからこわい!」
ずっと思っていた。
私には寄ってくる猫たち。
なんなら、気づけば所狭しと膝に乗っている猫たち。
パパには、まあそんなに寄っていかないけど、逃げることもそんなにない。撫でられれば嬉しそうにしている。
でも、子どもからはだいたい逃げる。
お兄ちゃんのほうには、ピオはだいぶ慣れてきた。妹ちゃんにも撫でられるときは大人しい。
モニカは、妹ちゃんにはまず寄ってこないし、お兄ちゃんからは逃げる。
好きではないと思っていたけど、子どもと猫が仲良しというのにあこがれもあったけど、そうではなかった。
「そっかー。怖かったか……ごめんねモニカ。」
「いいよ! 撫でてくれればいい!」
「わたしもー膝さえあればいいー」
「なっ、なんだよめっちゃかわいいじゃん!!」
私には懐いている猫。やっぱり、しゃべってもかわいかった。
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