第3話 待ち合わせ

 相手は30歳のサラリーマン。Koji。仕事はメーカーの営業。独身の一人暮らし。出身兵庫県。彼女いない歴1年。程よい感じだ。これが半年とかだと短いし、3年だと長い。


 関西の男は東京でわりと人気らしい。関西弁の面白い男が好きな女性は多い。

 関西の女性が人気かはわからない・・・。


 2人は待ち合わせをした。Kojiは家が板橋で、Aさんは小岩だった。どちらも下町。23区では家賃が安いエリアだ。


 待ち合わせは銀座にした。マリオン前。

 食事するのに銀座はよく使われる・・・ちょっと高いレストランとかがあるエリアだ。俺も女と待ち合わせする時は大体銀座だ。

 でも、20の大学生が銀座で待ち合わせしないと思うが。普通に考えて、俺が大学生の時も30の男と付き合っている子なんていなかった・・・。せいぜい25くらいまでだろうなと思う。すごい金持ちとかなら別だけど。


 マリオン前に30くらいの男性・・・服装は紺のポロシャツにジーンズ・・・。

 探したが見つからなかった。

 携帯で連絡を取り合ったが、いくら相手が「いるよ」と言っても、それらしい人はいなかった。Aさんは騙されたのかと思って不安になった。遠くから私を見て帰ってしまったんだろうか。Aさんの方も嘘をついているのだから、出て行くわけにはいかなかった。だから、遠くからKojiが来るのを待っていたのだ・・・向こうもそうかもしれない。


 メールで「今日はごめんね」と送ると、Kojiから返事が来た。「俺も、あの辺詳しくなくて。ごめんね」と書いてあった。それでまた次の週に会うことになった。その時初めて、Aさんは実は私・・・と実年齢を告白した。するとKojiは「いいんだよ。そんなの・・・大学生じゃないだろうなと思っていたよ」と書いて来た。Aさんはほっとした。


 そして、次に会う時はちゃんと自分自身を見てもらおうと思い、美容院に行き、できるだけきれいにして出かけたそうだ。そして、約束の時間にマリオン前に立っていると、黒いポロシャツにジーンズの男が現れた。30というよりも、45歳くらいに見えたそうだ。ポロシャツは洗いすぎて白っぽくなっていた。日焼けして色黒だった。おでこがちょっと後退している。


 Aさんは違和感を感じた。

 でも、「本当はいくつなの?」なんて聞けない。


 その後、Kojiと一緒に、近くのレストランに行ったが、古臭くてセンスのない店だった。味もあまりおいしくない。

 しかし、せっかく会ったのだし・・・と思い、Aさんはできるだけ明るく振舞った。

「Kojiさんって、どんなお仕事してるの?」

「言ってなかったっけ。機械メーカーの営業」

「へえ、そうなんだ。出張とかあるの?」

「うん。たまにね」

 あれ、機械メーカー営業と言ったら、基本は出張ばっかりなんじゃないだろうか・・・。

「何ていうメーカー?」

「あんまり有名じゃないから、一般の人は知らないと思う」

「どんな機械?」

「食品関係」

「ふうん。どんな食品?」

「冷凍食品かな」

 Kojiはあまり喋りたがらなかった。

 

「魔理沙ちゃんは?」

「私は派遣で・・・」

「どこの?」

「銀行」

「へえ。すごいね」

 男の顔つきが変わった気がした。

「どこの?」

 そこは大手都市銀行だった。

 Aさんは喋ることがなくて、仕事の話をした。習い事なんかしてないし、働き詰めで趣味もなかった。


「そろそろ行こうか?」

 Aさんは言った。

「うん。払っといて」

 Kojiは当たり前のように言った。

「え?」

「だって、サクラでしょ?あんた」


 Aさんは、妙に納得してしまった。


 その後、2人は映画を見て、夜になって鶯谷うぐいすだにのホテルに行った。有楽町(銀座)→鶯谷までは山手線1本で行ける。有名なホテル街だ。有無をいわさない感じで、Aさんは断れなかったそうだ。支払いは全部Aさん。


「出会い系の会社ってどこにあるの?」

「秋葉」

 Aさんは答えてしまった。

「へえ」

 Kojiはその時はそれ以上何も聞かなかった。

 

 帰りにAさんはKojiに名刺くれない?と言ったが、プライベートだから持ってないと断られた。「じゃあ、また来週」そう言って、二人は鶯谷駅で別れた。


 結局、AさんはKojiのことは何も知らないまま、自分のことを何もかも話してしまった。自宅は最寄り駅。職場は〇〇銀行錦糸町支店。

「どうしよう・・・」

 Aさんはすぐに携帯を着信拒否にした。

 あとはメールも返さなければいいんだ。




 

 

 





 


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