第2話 やりとり

 Aさんは彼氏無し。恋人いない歴5年以上。

 卑猥な内容でも、男からメールをもらうのは嬉しかったらしい。

 自分が必要とされている気がしたそうだ。

 でも、お客は本当の自分を好きになってくれている訳ではない。年を胡麻化してるし、顔もアイドルの〇〇ちゃんに似てますとか嘘をついていた。だから、虚像を演じないと愛してもらえない気がして、次第に空しくなってしまったそうだ。

 

 出会い系だから男は会えると思って金を出している。

 だから、全然会える気配がないとまずいんだ。


荻窪 「いつだったら会える?」(100円チャリン)

魔理沙「荻窪さんはいつがいい?」

荻窪 「じゃあ、土日は?」(100円チャリン)

魔理沙「もしかしたら、親が来るかもしれないから・・・わかったら連絡するよ」

荻窪 「わかったら教えて」(100円まいど)

魔理沙「うん。どこ行きたい?」  

荻窪 「好きな所でいいよ」(100円まいど)

魔理沙「秋葉とか」

荻窪 「いいんじゃない。じゃあ、秋葉にしよう」(100円チャリン)

魔理沙「秋葉詳しい?」


 そして、数日後には

「今度の土日は駄目になっちゃった😂」


 Aさんは週3日しか入ってないから、仕事に来た時にまたメールを再開する。

 携帯でやってるのに、普通だったらこんな女はいない・・・。でも、馬に人参をぶら下げて走っているようなものだから、男たちはまたメールを再開するんだ。


 携帯アプリなのに、実際はパソコンで打ってるから、ものすごく入力が早くて「人間技とは思えない」と言われたこともあったそうだ。それに、掲示板に「〇〇ちゃんってサクラだったんですね」と書かれたこともあった。


 本当は駄目だけど、携帯アプリにメアドを書いてきた人がいた。

 都内に住んでる30歳くらいの会社員だった。

 誠実そうで、やり取りは楽しかった・・・。

 普通に考えて、出会い系をやってる時点で、遊んでる気がするのだが・・・。

 本気で彼女を作ろうと思っていたら、もっと違うサイトがあるだろう。

 

 Aさんはその人に好感を持っていたから悩んだ。もし直接連絡を取ってみて、20歳だと思っていた女の子が、実は30歳の派遣社員だったらやっぱりお断りされるだろうか・・・。アイドルみたいに可愛いと思っていた子が、偏差値50くらいの顔だったら・・・。

  

 Aさんはこっそりメアドを書き写して、帰りの電車の中でその人にメールを送った。20のふりをして。


 メールはずっと続いた。久しぶりに彼氏ができたみたいでAさんは楽しかった。出会い系のサクラというのは黙っていて、年を胡麻化していたと言ってしまおうか。Aさんは迷った。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る