サクラ
連喜
第1話 やらせ
今回の話。
『サクラ』といっても、春に咲く植物の桜じゃない。
やらせをする方のサクラの話だ。
サクラの語源は、江戸時代に遡る。芝居小屋で歌舞伎をタダで見せてもらうかわりに、掛け声をかけたりして場を盛り上げる人、またはその行為をサクラと呼んでいたそうだ。それが、明治時代に、露天商が仕込み客を使う時にも転用されるようになった。
今もサクラはいっぱいいるだろう・・・テレビとか、ネットの口コミとか。
出会い系のサクラも一般的に知られている。
10年以上前の話。以前、勤めていた会社で働いていた派遣の人から聞いた話。
その人の友達で、昼は派遣、夜はサクラのバイトをしている人がいた。年齢は確か、30歳くらいだったと思う。地方出身で、見た目はごく普通の人だったとか。10人くらい男がいれば、1人か2人はその子を気に入るかもしれないという感じ・・・。彼氏はいなかったようだ。
地方から出て来て、一人暮らしの人が東京に住み続けるのは大変だ。
事務系の派遣だと年収300万くらいはもらえるけど、それでも足りないみたいで夕方からアルバイトを掛け持ちしている人がけっこういる。兼業するのはコールセンターとか、水商売とか。さらに土日も週2の派遣を入れていたり。キツイと思うけど、こういう人には何度も会ったことがある。俺だったら家賃の安い所に住むとか、生活水準を下げると思うけど、考え方は人それぞれだ。
件の派遣さん(Aさん)も週5で事務の派遣。週3回ほど出会系のサクラ、土日は住宅展示場の受付をやっていたそうだ。昔だから、出会い系のサクラは一箇所のセンターに集められて、携帯でやっていると見せかけて、パソコンで入力していたそうだ。
今はコロナで出会い系の利用者が増えているらしい。
普通に生活していると出会いもないし、人を誘うのも憚られる。
誰だって人恋しくなるだろう・・・。
彼女がやっていた出会い系サイトは、メッセージを送る都度課金されるというものだった。女性は無料かもしれないが、本気で登録している女性は多分いないんじゃないかということだった。そこのバイトは大学生とか20代が多く、男が7割くらいだった。そういう中で本物の女性は貴重だ。30だと年を取り過ぎだから、10代から20代半ばのふりをする。一人でいくつものプロフィールを作って、それに申し込んでくる男性とやり取りをするのだけれど、何度もメールを送らせるために短文しか返さない。それで、男は何回も課金する。
また聞きだから正確ではないけど・・・1通メール送るのに100円くらいかかった気がする・・・。ありえない。お店に行った方が早い。
俺は出会い系のサクラをやったことがないから上手く書けないけど・・・
例えばこんな感じだろうか。
「
今はコロナで講義がオンラインだから、友達に会えなくていつも一人です🥰マメで返信早い人、仲良くしてください💛」
なんてのを出す。オタク感満載だ・・・。住所は書かない。地域が限定されるから。有料サイトだから、男はただのメル友じゃないくて会える子を求めてる。だから、男の住んでいる所に寄せて書く。
魔理沙「どこに住んでるの?」
男「荻窪」
魔理沙「へーそうなんだ。私は市川」
そうやって、遠くも近くもない所を書く。荻窪~市川はローカル線で50分くらいだ。頑張れば会えそうな感じにしておいて、やり取りを引っ張る。
男が出会い系のサクラをやると、表現が露骨で不自然になるらしい。だから、サクラだとバレやすい。Aさんは、女性だし普通っぽいやり取りをしていたお陰で、すぐに稼げるようになったらしい・・・。
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