第37話 巨大ワームの大好物
目当ての買い物を終え、《ノームランド》入り口に戻ってきた俺たち。
「ヴェリオさん……あの……これから私たち、どうするのでしょうか……?」
ルルナの手には大量の香草、そして、頭には疑問符が浮かんでいるようだった。
「これから『土のリング』を手に入れるため、巨大ワームをおびき寄せる」
「巨大ワーム!?」
大声をあげるチェルシー。
「そうだ。普段、巨大ワームは地中深くで生活しているんだが、好物を利用してヤツを地上に出す必要がある」
「え? なんでですか?」
「まさか……」
どうやらチェルシーは気づいたようだ。
「『土のリング』が巨大ワームの腹の中にあるからだ」
──そう。
『土のリング』──土の精霊ノームは、遥か昔に巨大ワームに吞み込まれ、今も消化されずに胃袋の中に閉じ込められているのだ。
「ええええええ!? じゃあ、この大量の香草って……」
「巨大ワームさんの好物ってことなんですか!?」
「…………ま、まあな」
俺はルルナの質問に一拍置いて答えた。
嘘は言っていない。嘘は。
◆
《ノームランド》から離れた砂漠地帯。
ここが巨大ワーム発生のポイントだ。
本来なら時間を掛けて発生ポイントを探索するのだが、予備知識のおかげで色々とショートカットすることができた。
本音を言うと、この後のイベントもショートカットしたいのだが……。
「よし。それじゃあ2人とも、持ってる香草を自分の身体に振りかけろ」
俺は言った直後、頭から香草を被る。
「よし……じゃないわよ!? ヴェリオ様、さすがに唐突すぎよ!? って、ルルナ!?」
「はい! 振りかけました! これで良いでしょうか?」
「ああ。さすがはルルナだ。肝が据わっているな」
「……うぅぅ。いいなぁ……ルルナ、ヴェリオ様に褒められて……。こうなったら、アタシだって!!!!」
チェルシーも意を決し、香草を身体に振り撒いた。
「いいぞ、チェルシー! あとは、そのまま待機だ」
「はい!」「……うぅ」
元気よく答えるルルナと、身体に付着した香草を気にするチェルシー。
対照的な2人を微笑ましく見守りながら、俺はその場でジッと待った。
──しばらくして。
俺たちの立つ砂漠地帯。
その地面が大きく揺れ始めた。
「ヴェリオ様!? これは!?」
「大丈夫だ。そのまま立ってろ」
俺たち3人は一歩も動かず、ただただ様子を見守る。
……香草を全身に付着させたまま。
すると直後。
砂の大地が激しく波打ち、地割れが発生した。
いよいよ目的のモンスター、巨大ワームとの御対面である。
「シュハアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!」
地中から大きな鳴き声とともに、巨大ワームが出現した。
全長約200メートル。
まるで高層ビルのような大きさの巨大生物。
見た目は芋虫のようだが、大きく開いた口が特徴的である。
全てを丸呑みしてしまうかのような大きな口。
開いた口の内部には深淵が広がっており、外からでは身体の中の様子を確認することはできない。
全てを呑み込む黒い空間。
俺はブラックホールを思い浮かべてしまう。
「ヴェリオ様!? ア、アタシたちは、こ、このまま突っ立っていればいいの!?」
「ああ」
「ホ、ホントに!? ねぇ!? ホントに!? なんか、巨大ワームがアタシたちを呑み込もうとしてるんだけど!?」
「ああ」
チェルシーの言うとおり、眼前の巨大ワームは俺たちに迫り、
そして──
「シュウウウウウウウウウウウウウ!!!!! ハアアアアアアアアアッッッ!!!!!」
巨大ワームは物凄い音を立てて、空気を吸い込んだ。
「キャアアアアア!!!」
「きゃああああああ!」
「っくぅ!!」
空気だけでなく、俺たち
「巨大ワームの好物って、
巨大ワームに吸い込まれながら、チェルシーが絶叫を轟かせた。
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