第126話 彩夏のクラスに行きます
「それじゃあ、私は先に行ってくるよ」
「「行ってらっしゃーい」」
――翌朝。
お店の仕込みの為に早めに家を出る藤咲さんを俺たちは見送った。
「…………」
「…………」
俺と彩夏はテーブルに向かい合って無言で朝食のクロワッサンを食べる。
彩夏はたまにチラチラとこっちを見てくるが、俺と目が合いそうになると慌てて逸らしてテレビの朝の情報バラエティ番組を見てしまう。
今日もMCが渋い声で場を回していた。
「「ごちそうさまでした」」
食べ終えると、食器をシンクに運ぶ。
俺は腕まくりをしてスポンジと洗剤を手に取った。
「俺が洗うよ」
「わ、私が洗う!」
――ピンポーン。
今日、初めて彩夏との会話が成立した瞬間にインターフォンが鳴った。
「彩夏ちゃ~ん! 迎えに来たよ~」
そして、インターフォン越しに彩夏を呼ぶお友達の声が聞こえた。
「ほら、呼ばれてるよ。彩夏が代わりに食器を洗ってくれるなら、俺が代わりにみんなと登校するけど?」
「――それはダメっ! あ、洗い物お願い……」
俺の本場仕込みのアメリカンジョークはウケることなく、むしろ彩夏に滅茶苦茶拒絶されてしまった。
「い、行ってきます……」
そして、彩夏は鞄を手に持つと逃げるように家を出て行ってしまった。
関係構築は前途多難である。
俺ももう少しギャグを学んで、面白いお兄ちゃんにならなくては。
食器を洗い終えた俺はテーブルを拭くために、ふきんを濡らして持ってくる。
すると、そのテーブルの上に見覚えのある小さい小包が置いてあった。
「あらやだっ!? あの子ったら、お弁当忘れてるじゃない!」
なぜかお母さん口調になる俺。
独り言を言った直後、窓辺でチュンチュンと鳴くスズメの声がより虚しさを加速させる。
もう学校に着くころだと思うけど、俺は彩夏のスマホに電話をかける。
すると、彩夏が着信音にしているアイドルの曲が居間に流れた。
お弁当が入った小包の裏で、彩夏のスマホが悪びれもせずに画面を光らせていた。
「やだも~、あの子ったら! 全く!」
なぜか一人でお母さん口調になる俺。
むしろオカマに近い。
上空を通過する飛行機の音が虚しさを加速させる。
彩夏は少し抜けているところはあるが、ここまで壮大な忘れ物は恐らく俺が居るせいだろう。
藤咲さんが作ってくれたお弁当。
もし俺がそんな最高の一食を食べ損ねたら数日は思い出して落ち込む。
――しょうがない、試験を受けるついでに教室に届けに行くか。
俺は彩夏のお弁当とスマホを持って家を出た。
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