第107話 お見送り その1
――翌日。
サンタニア国際空港。
沢山の人たちが俺と柏木さんの見送りの為に駆けつけてくれていた。
もちろん、そのほとんどは病院で数多くの活躍をしてきた柏木さんの関係者だ。
みな、キチっとしたスーツを着ていてベテランのお医者様が多いみたいだけど柏木さんにはペコペコと頭を下げている。
(やっぱり柏木さんって凄い人なんだよなぁ……)
改めて認識しつつボーっと柏木さんを見ていると、リリアちゃんが俺の腕を引っ張った。
「"こら、柏木なんかこれからいつでも見れるでしょ? ちゃんと私たちの相手をしなさいよ"」
「"ごめんごめん、リリアちゃんが可愛すぎて顔を合わせられなかったんだ"」
「"ば、ばば、馬鹿なこと言わないでっ! そんなジョークじゃ誤魔化せないわよ!"」
リリアちゃんは満面の笑みでそっぽを向く。
チョロくて良かった。
「"山本君、リリアの事を助けてくれて本当にありがとう"」
「"本当に夢のようだわ。またリリアと一緒にこれからも生きていけるなんて"」
リリアちゃんのご両親はそう言って俺の手を握る。
もう何度目か分からない感謝の言葉だ。
「"リリアちゃんと一緒に日本にも観光に来られるんですよね? ご案内できる日を楽しみにしています!"」
俺がそう言うと、リリアちゃんは何やら得意げに胸を張った。
「"実は私たち、日本に移住することにしたのよ! 今、色々と準備している最中だから待ってなさい!"」
「"えぇ!? そ、そうなんですか?"」
突然のサプライズ発表に驚くと、ご両親が説明してくれた。
「"えぇ、リリアが日本について色々と教えてくれたの。治安も良いし、食べ物も美味しいって"」
「"僕たちもすっかりその気なんだ。できれば君たちのご近所に住みたいね"」
「"凄い! ぜひお待ちしてます!"」
嬉しがっている俺を見て、リリアちゃんは意地悪な表情をした。
「"あらあら、何よ喜んじゃって~。 やっぱり私とのキスの味が忘れられないのかしら~"」
リリアちゃんの一言で俺は凍り付いた。
お母様は「あらあら、そうなの~?」と嬉しそうにしているが……
「"山本君、少し詳しく聞いても良いかい……?"」
お父様は当然、貼り付けたような笑顔になってしまった。
「"ち、違います! 人命救助の為に――"」
「"そ、そうよ! 合意の上よ! 確かに、いきなりされた時はびっくりしたけど……しかもあんなに何度も熱心に……情熱的に……"」
「"ほう……?"」
「"リリアちゃん! どんどん誤解されてるから!"」
どこか的外れな弁明をするリリアちゃんに邪魔をされながら、何とか人口呼吸のことだと説明し、俺は命拾いをしたのだった。
――――――――――――――
【業務連絡】
1話が少し短いですが、毎日投稿を続けていきますので最新話を追いかけてくださると嬉しいです!
☆評価を入れてくださった皆様、本当にありがとうございます!
励みになります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます