第56話 お隣さんは可愛い女の子でした

 

 1日の検査が終わり、時間はもう夕暮れになっていた。


 柏木さんと別れて、病院の自室に戻ってシャワーを浴びるとすっかり夜になった。


 英語の勉強のために柏木さんから薦められたB級映画を見ると良い時間になったので、ベッドに横になる。


 ……しかし、眠れない。


 今までベッドに沈み込むような重さを感じて眠っていたのが急に無くなったので、フワフワして落ち着かない。

 30キロくらいの重りを上に乗せて欲しい……切実に。

 

 どうしても眠れそうになかった俺は夜風に当たることにした。

 この身体になってから、少しの睡眠で疲労がとれるようになって、あまり眠くないのも原因だと思う。


 もう夜中なので音を立ててしまわないように、部屋の扉をゆっくりと開く。


 ――すると、隣の個室の扉も開いた。


 小学3年生くらいのアメリカ人の可愛い女の子が同時に出てきた俺の顔を見て、驚きで開口したまま瞳を丸くしている。


(……当たり前だけど、お隣さんはいるよな。今まで一回も会わなかったけど、こんなに小さな女の子が入院してたのか)


 怖がらせてしまわないように、俺は笑顔で挨拶をした。


「"こんばんは、君も眠れないの?"」


「…………」


 ――バタン


 しかし、驚きでボーっとしていた女の子はハッとするとすぐに慌てて扉を閉めた。

 ガチャリと鍵を固く閉ざす音が静かな廊下に響く。

 何これ、傷つく。


(まぁ、こんな夜中にこんな男と鉢合わせしたらそりゃ怖いよな。ごめんね……)


 心に傷を負いながら俺は病院の中庭のベンチでしばらく星を見上げていた。


 涙が零れ落ちないように。

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