第32話 ここが俺の部屋ですか

「ここが、入院中に君が滞在する部屋だ。生活に必要な物は一通り揃えてある」

「す、凄い……!」


 入院する部屋は悲しいことに俺がもともと彩夏と一緒に住んでいたアパートの一室よりも大きく、床が軋む音もしない。


「疲れているだろう? 今日のところは休んでくれ、検査は明日からだ。それと、君に持たせた箱の中には英語の学習教材が色々と入っているから活用したまえ」


 そう言われて、俺は箱を開く。

 確かに、自習に使えそうな教材が沢山入っていた。

 退屈しないように面白そうな英語の小説も入っている。


 しかし、どうしても気になる異物を指さして俺は尋ねた。


「……この、大量に入っている駄菓子は何ですか?」


「これはラムネシガレットと言ってな。シガレットはタバコという意味だ。つまり、タバコに似せて作られた筒状のラムネで、食べるととても美味しい」


「いえ、そのお菓子は知ってます。俺も子供の頃はよく持ち歩いて食べてました。なんで勉強道具と一緒に入っているのかと思いまして」


「ラムネの原料はブドウ糖、コーンスターチ、クエン酸だ。勉強のお供にちょうど良いし、とても美味しい」


「はぁ……」


「舐めていれば唾液が出るからな、喉の渇きも緩和されるだろう。しかもとても美味しい」


「美味しい事はとてもよく分かりました」


「なら十分だ」


 どうやら、俺にこの駄菓子を布教したいらしい。

 なんていうか、"圧"が凄い。


 柏木さんは俺を部屋に残して出てゆく。


「明日は朝の7時から検査だ。夜はちゃんと寝て、寝坊はしないように。よく眠れるといいな」


 手をヒラヒラと動かして別れの挨拶をすると、柏木さんは扉を閉めた。


 ――――――――――――――

【業務連絡】

勉強期間や治療期間はある程度カットしてテンポよく進めるつもりです!

ひきつづき、よろしくお願いいたします!

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