第26話 動き出したチャクラ

 突然、思いがけずロカから首を絞められ、頭がパニックになりながら、バタバタと抵抗する小夜美。


「ロカ、何するの......? 苦しい......止めて!」


「すみません。こういう事は初めてで、力加減が分からないもので......」


 ロカは、小夜美の首を絞めていた両手を緩めた。


「どうして、急にこんな事を......? 私を一度殺して、もっと効率の良い身体に改造でもさせるつもりだったの、ロカ?」


 しばらく絞められて苦しかった喉の反動で、何度も咳込んだ小夜美。


「あなたの喉のチャクラ、本来でしたら、もう、とっくに開いてそうだと思っておりました。ですが、まだ、詰まっている所が有ったようですので、私のハンドヒーリングで、解放させてみました。その際に苦しい思いをさせてしまい、申し訳ありません」

 

 ロカの言葉で、殺すという意図は含まれてなかった事を解した。


「喉のチャクラ......? 聞いた事が有るけど、別に開くとか、そういう事が出来な人間の方が大多数なはずだから、気にしてなかったのに......」


「地球人として生きていくには、今まで通りでも支障無かったと思います。ですが、あなたには、せっかくですから、パサラミト星人として得ている能力を開花させてもらいたかったのです! 喉のチャクラが開いた事によって、あなたはインスピレーションやコミュニケーション能力に恵まれます! それに慣れて、使いこなすうちに、テレパシーやチャネリング能力も、開花し出す事でしょう!」


「えっ、私が、そんな凄い能力を授かったの......?」


 ロカの首絞めのような行為が、ハンドヒーリングだった事、その行為により享受出来た能力に驚かずにいられなかった小夜美。


「これで、あなたの表現力も現実化という能力も格段に増しました! これからは、あなたの理想を思い描き、近付けそうな事をどんどん実践していって下さい! 私は、パサラミト星からずっと、あなたの成功を祈ってます!」


 その言葉を言い終わるが早いか、ロカの姿が透過しそうなほど薄くなり、背景に溶け込もうとしていた。

 

「待って、ロカ! あなたは、どうして、こんなに早く去ろうとするの......? 私は、もっとあなたと一緒にいたかったのに!」


 今まで小夜美の周りには妊娠以外は、こんなにも親身になって行動を起こしてくれた人などいなかった。

 過去に、ロカの人生を狂わせた、憎まれても当然のはずの存在だというのに、不器用ながらも、彼はこんなにも、小夜美に対し誠意の限りを尽くしてくれた。


 今なら、サーミ王女の気持ちが小夜美にもよく理解出来た。

 このような人物は、後にも先にも、二度と小夜美の前に現れないかも知れない。


「地球を美しく甦らせる事の出来たあなたと、またいつの日か、どこかで再会出来る時を心待ちにしてます!」

 

 その言葉を最後に、ロカが背景に透過して行くような視界の変化で、ロカが去った事を悟った小夜美。


「ありがとう、ロカ! 私、あなたに恥じない自分になれるまで頑張るから!」


 ロカの姿が有った方を向いて、届く事を望みながら大声で言った。

 

(もう、いないんだよね......ロカが、どうしてこんなにも、私に親切にしてくれていたのかを聴きそびれてしまった)


 その瞬間、小夜美の意識が時空を飛んだ。


 眉間に有り、第3の目といわれる『サードアイチャクラ』が動いている感覚をハッキリと感じ取れたと同時に、小夜美の脳裏に、鮮やかにビジョンが広がった。

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