第25話 祝福

 地球に残る事を熱弁した小夜美に対してのロカの笑みが気になった。


(何よ? ロカがそういう笑い方をする時って、何か意味深な感じ......)


 ところが、ロカの口からは、小夜美の予想を裏切る言葉が飛び出した。


「おめでとうございます! 今度こそ、本当の意味での祝福です! 申し訳無かったのですが、実は、もう1度だけ、あなたを試していました」


 今迄の陰湿な表情が嘘のように、晴れやかな笑顔を浮かべていたロカ。


「試した.....って? どういう事なの......?」


 ロカの切り替わりの速さに、感覚的にも追い付けない小夜美。


「先ほどのあなたの発言が問題でした。あなたが元の婚約者である隣国王の年齢などの外形上の理由から、婚姻を回避したい気持ちを伺った時です。あなたには告げませんでしたが、そのたった一言で、あなたのレベルは、一気に急降下していたのです!」


 先刻、パサラミト星に戻る前に、サーミ王女が逃亡するほど婚姻を避けた婚姻を自分が戻って償うという運命になるのか、尋ねずにいられなかった小夜美。

 まさかその一言だけで、せっかく順調に上昇していた、自分のレベルが急激に降下するとは思いもよらなかった。


「それだけの事で、私は、またパサラミト星人のレベル以下になってしまったって事なの......?」


(自分がどうしても気がかりで尋ねた疑問だけで、そんなにも急にレベルが落ちるなんて! 老齢の国王と結婚するのかどうかって、確かめたかっただけなのに! その発言がネックになるなんて......!)


「そうです。なので、あなたの再起をかけて、わざとパサラミト星人の地球移住話を持ちかける事にしました」


 ロカの言葉で、安堵と同時に、拍子抜けした小夜美。


「え~っ! 地球侵略は、作り話だったの......? 私を、あんなに激情させておきながら!」


 あんなに熱弁していた自分が、急に恥ずかしくなった小夜美。


「申し訳ありませんが、それくらいのスケールの話でないと、あなたの真意を導き出し、レベルを巻き返す事は出来ないと思ったので。これで、あなたは晴れてパサラミト星人の仲間入りです! さて、ご家族に挨拶をしてから、帰星しますか?」


 一度、降下したレベルを取り戻し、ロカに祝福されたのは嬉しかったものの、やはりまだ、地球を去るというのは名残惜し過ぎた。


「ロカ、私がさっき言った事、覚えている? 地球や地球人の為に何か、私にも出来そうなやり残した事を終えておきたいの! それは、どれくらいの時間がかかるのかまだ見当つかないけど、その事は、了承してもらえる?」


「あなたなら、そう来ると思ってました! あなたの納得が行くまで、地球に残り、地球の次元上昇の手伝いを終えてから、パサラミト星へ帰星して下さっていいですよ。私は、今までも待つ事には慣れてますので」


 そのロカの言葉が、小夜美の胸に暖かく広がった。


「ありがとう! 私1人で出来る事なんて限られているかも知れないけど、それでも、この星に、何か私に出来る形で行動を起こしたい!」


(長い間、地球人という事を疑わずにいた私をずっと受け入れてくれていた地球に、恩返しを少しでも出来たらと思うんだけど......でも今の私に出来る事というのは、何だろう......?)


「あなたのお気持ちはよく分かりますが、今のあなたのままだと、多分、命尽きても、地球や地球人にとって、影響を与え得るほどの何かを発揮出来ない状態です。ですから、ここは、私にも、手伝わせて下さい」


 ロカは、そう言いながら、小夜美にとって予想外の行動に出た。

 その大きな両手で、不意に小夜美の首を強く絞めようとしたロカ。

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