第24話 選択肢

 記憶が消された事で、他の星に流されても、違和感が無いという機械的な処理的なロカの説明に違和感しか無い小夜美。


「選択肢というのは、私がパサラミト星へ今そのまま行くか、パサラミト星人達が移住するまで、ここで待って、地球人を追い出すかの2択だけ?」


 小夜美にとって、理想的な選択肢ではないという意思表示を嫌味のように伝えた。


「追い出すとは......大変、人聞き悪く、しない方が良い表現ですが、まあ意味合い的には相違ないのかも知れないですね。気が進まないかも知れないですが、あなたはどちらかを選ばなくてはならないです。もちろん、あなたが、どちらを選んでも構わないです」


 ロカに言われた選択肢はどちらにしても、地球人は、自分達の母星である地球から退去させられてしまうという事には変わりなかった。

 ただ違う事といえば、それに、小夜美自身が加担するかどうかだった。

 

(私が選びたい選択肢は、そんなパサラミト星人達にとって、自分本位過ぎる筋書きではない!)


「そんなのは、どれもイヤだから! 私がここに残って、パサラミト星人の侵略を防ぐと言う選択肢は無いの?」


「あなた1人の威力では、それは不可能です! 我々は、あなた達の文明より、はるかに進化してますので、その気になると、瞬時に地球人全てを消滅させる事も可能なのです!」


 それまでずっと丁寧な口調だったロカが、まるで脅すように言った。


 そのロカの言葉で、自分の無力感を確認させられ、自分が悠々と生きて行く為にはパサラミト星人として生きるしか無い事を痛感した小夜美。

 それでも、やはり、侵略者である自分達だけが優位に立ち、残された家族や仲間や、そして大勢の地球人の居場所を失わせるのは忍びなかった。


「あなたが、そこまで悩む必要は有りますか? パサラミト星人のレベルに追い付いたあなたには、いずれにせよ余生の幸せは保障されているのですから! もしも、地球人からパサラミト星人に入れ替わる時点の地球を見たくないのでしたら、ひとまず、パサラミト星に戻りましょう!」


 そのロカの誘いに乗ってしまった方が、地球人達の行く末を見ずに済み、ラクに生きれるのは明確だった。

 が、どうしても、今まで自分が生きた地球を、自分を支えてくれた人達を見捨てるような事だけは出来ない小夜美。


「私は、どちらの選択肢も選べない!! 私は、ここに残る事にするからっ!! 私は、地球人としてここに残るの!!」


 驚くロカを前に、キッパリと2度言い切った小夜美。


「それは、まさか、せっかくレベルアップしたというのに、地球人より高次元のパサラミト星人として生きる権利を放棄するという事ですか?」


 パサラミト星人となる事を不意にするなどとは、信じられない口調のロカ。


「私は、生まれてからずっと地球人だったの! ここが私の大切な故郷の星なの! だから、これから先だって、例えこのまま侵略されるとしても、パサラミト星には戻らず、地球人として生きて果てたい!!」


「あなたは、自分の選択した事をしっかりと理解しているのですか? 地球人達と一緒に命を落とすとしても異存はないという事ですか?」


 小夜美の意思を確認しようとしているロカへ念押しのつもりで、尚も強く主張した。


「......私は、ちゃんと理解している! この際、もう地球人達と一蓮托生で構わない! 地球人達は、確かに、争い好きな人が多いし、あなた達に比べたら、愚かな人種かも知れない......でもね、私は、そこで沢山の人々に支えられながら、今まで生きて来たの! ここでは、私だけじゃなくて、地球人達、その誰もが誰かにとって大切な人達なの!! 私1人の力なんて、あなた達とは比較にならない矮小なものかも知れないけど......私や気付いた人々の努力によって、あなた達に同情されないように、地球をもっと素晴らしい星に蘇らせてみせる!! だから、お願い!! 地球を侵略するのは待って!!」


 小夜美の二心など無いような強い決意に、ロカはフッと笑った。

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