第23話 地球への移住
自分が、パサラミト星へ戻っている間、自分の身近な人達が心配し捜索しそうで、気がかりな小夜美。
「その件でしたら、ご心配は要りません。何故なら、あなたは関係者の記憶から一切抹消される事になります。つまり、あなたは、地球には最初から存在していなかった事になりますので」
感情を込めず淡々と話したロカとは正反対に、その内容は、小夜美にとって感情的にならずにいられなかった。
「えっ、何、それって......! 私が家族や仕事仲間達の記憶の中から抹殺されて、最初っから存在していなかった事にって......それじゃあ、私が今まで歩んだ人生は、一体何だったの?」
自分の存在が、関係者の記憶から消される事に対し、聞き流すなど出来ない小夜美。
「彼らは、そうですね......あなたのレベルアップへのお手伝いを志願してくれた、形式上の存在達というだけだったと割り切ってしまうのはいかがでしょうか? 彼らの役目を果たされた今は、もうその事に関し振り返らない方が良いのでは?」
ロカの形式的な言い方が
それでも、自分は本来、地球人ではなく、パサラミト星人なのだとすると、今の自分は、ロカが提示したその選択肢しか無いのだと思い込もうと努めた。
「何だか今までの自分が、全否定されたような感じで、ものすごく不本意なんだけど......でも、そうしないと元の星へ戻れないなら、私には、そうするしか仕方ないのかも......」
ここで反論したところで、別の選択肢が用意されるのではないから、従うほかは無いと思った小夜美。
「あなたは、今まで長年、地球人として生きて来ました。ですから、その習性のような感覚は、すぐには抜けないかも知れないですが、我々パサラミト星人達と接しているうちに、だんだん変わって来ると思います」
(パサラミト星人は、きっとロカのように、感情の起伏が平坦で、簡単に何でも割り切れる淡々とした個性の人達が多いのだろうな.....そして、私もいつしか、だんだん、その人達に同化してゆく事になる......)
「それで、私は、これから、すぐにパサラミト星へ帰還する事になるの?」
「それでも良いですし、ここで、待機するという選択肢も有ります。なぜなら、私達パサラミト星人は、地球が気に入りました。地球には、まもなく、パサラミト星人の大半が移住する予定です。その時まで、あなたはここに待機して頂いても構いません」
小夜美にとって、また耳を疑うような内容だったが、ロカは事も無げに、いつもの調子でサラッと言った。
「パサラミト星人が、地球に移住......って、どういう事?」
「その意味の通りですよ。地球のように、こんなに自然が豊かで空気の美味しい星は、この広い宇宙全てを探しても、なかなか無いんです。残念ながら、地球人達は、この星に悪影響を与える事しか出来なかったですが、我々パサラミト星人でしたら、元通りの美しい星へ戻して、争いも貧富の差も無く、全人類が幸せに暮らせるように致します。その方が、よほど理想的でしょう?」
ロカは小夜美にその計画がいかに素晴らしいかアピールしているのは分かった。
だが、パサラミト星人の大半が移住してくるという事は、その際に、それまで生活していた地球人達はどうなるのか疑問だった。
「今、住んでいる地球人達は? 私の家族はどうなるの?」
「残念ながら、そのそれぞれの精神性のレベルに見合った星へと振り分けられる事になります。あなた以外のご家族も、バラバラの星に移住する事となる可能性も有ります。ですが、その場合もまた、彼らの地球での家族の記憶というものは消去されます。彼らは、何の疑問も抱かず、その星ですぐに適応する事が出来ますから、ご心配は要りません」
一応、小夜美の心配な気持ちを汲んで説明したつもりのロカ。
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