第22話 レベルアップと引き換えに......

 ロカが、パサラミト星時代の許婚いいなずけの国王から依頼され、連れ戻しに来たのかとさえ思わされてきた小夜美。


(あの状況に戻されるくらいなら、パサラミト星に戻りたくなんてない! じゃないと、サーミ王女だって報われないはず!)


「パサラミト星はもう、あの時のような絶対君主制でも封建社会でもありません。個人の自由が尊重される、とても生きやすい星へと変貌を遂げてますので、ご安心を」


 悲観的になっていた小夜美の表情で、テレパシーを使わずとも心の声が聴こえたような気になり、笑わずにいられなかったロカ。


「笑いながら、そんな事言うなんて、ホントに失礼な人ね! どうせ、私の心を読んだのでしょう! だって、気になるじゃない、そこは! 戻って、サーミ王女が歩む予定だった事を私が身代わりとなって、これから果たさなくてはならないのかもって!」


「あなたのお気持ちは、ごもっともだと思います。何度生まれ変わっても、そこは譲れないような心が、サーミ王女様から受け継がれていそうですので......」


 まだ笑っているロカに、すっかり憤慨した小夜美。


「私、次元上昇が達成できても、何だか、まだあなたに見下されているように笑われているんだけど......もしかして、まだ私、レベルが足りてないとか? そのレベルって、今したようなこういう言動で、また上下してしまうくらい不安定なものなの?」


 せっかくレベルが達したものの、その後の小夜美の言動が原因で、レベルがまた降下してしまうようではかなわない。


(いちいち、レベルが落ちないように、これからは、ずっと言葉と行動を選ばなきゃならないなんて、面倒過ぎる!)


「確かに、あなたはあの一件だけで、レベルが急上昇しましたので、まだ感覚的に慣れていないはずです。今までの習慣など、身に付いてしまっているものが出てしまいがちかも知れないですが、それらでレベルが落ちるとしても、それは微々たる程度です。あなたも時の経過次第で、今のレベルに見合った言動を自然と出来るようになってゆきます」


「そう、良かった! で、その帰星という事をしたとしても、次元上昇済みの私の能力なら、いつでも、地球に戻って、地球人としての私になって、家族とかに会う事が出来るのでしょう?」


 パサラミト星へ戻ったが最後、ここでの家族とは一生会えなるなんて事は無いように、確認しておきたい小夜美。


「会えないという事は無いのですが......ただし、次元上昇出来たあなたと、してない地球人が会うのは、スムーズにはゆきません。相手に、あなたが以前、嫌というほど体験した、あの苦しみを経過させる必要が有ります。自分の大切な人々に対し、それをあなたは望まれますか?」


 ロカの言葉が胸に鋭い刃のように突き刺さった。


(弟や妹はともかく、両親はもう高齢だから、あんな過酷な衝撃に耐え切れるとは思えない......地球に残って生活を続ける弟や妹達から、両親を奪うような事はしたくない。私が我慢するだけで......)


「目の前で対面しなくても、家族に私が健在している事を知らせられるような能力とかは、私が得る事が出来る?」


 次元上昇出来たなら、遠隔透視能力も身に付いているのかも知れない事を期待している小夜美。


「そうですね、今のあなたのレベルだと、まだキツイかも知れないですが、今後、パサラミト星へ戻り、尚もレベルアップしてゆきましたら、それは十分可能な能力です」


 ロカの言葉で安心した小夜美。

 それでも、急に自分がパサラミト星へ帰星する事によって、家族や仕事仲間達が心配しないかと気になった。

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