第18話 サーミ王女の心
((私の未熟さ、自分本位さが、あなたまで巻き添えにしてしまいました。あなたに対して、どうしたら
(えっ、どうしたの? 私、今、私と違う気持ちが入って来ていた! どうして、こんな事になっているの......?)
サーミ王女の心が、いつの間にか小夜美に入り込んできたかのように、急にロカに対して申し訳無い思いでいっぱいになったかと思うと、それを認識している小夜美本来の気持ちも共存していた。
『ご自分1人で、そのように罪を背負わないで下さい。私は共犯者です』
((いいえ、こんな事になるのでしたら、何が何でも私だけで行動すべきでした。申し訳ありません))
(私の体を使って、サーミ王女の心をロカに伝えられるのなら、まあ仕方ないよね......)
自分の気持ちは出る幕ではないと、推し込んだ小夜美。
『同行したのは、あくまでも私の決断です。その事で、ご自身を責めないで下さい。私は、こうして刑期を終えて解放されましたので、サーミ王女様も一刻も早くそのようになって、パラサミト星へ帰還して頂きたいのです」
((ありがとう、ロカ。今の私に出来る事は、その刑期を全うする事だけなのですね......))
(刑期......)
その刑期があとどれくらい続くのか、小夜美には皆目見当がつかなかった。
『今のあなたの状況は、刑期中というと、語弊が有るかも知れないです。何故なら、あなたには、地球人的な意味合いの懲役も禁錮も存在して無いからです。今のあなたの水準では、地球外には出られないという、広い意味での禁錮は有りますが......』
水準という響きで、以前ロカが口にしていた、小夜美自身は、地球人としては標準レベルであるが、パサラミト星人の平均の半分にも満たないと言われていた事を思い出した。
(私がパサラミト星に戻れる程度まで、レベルを上げる事が先決という事は分かりましたが、実際どのようにすると......えっ、何? こんな口調は、私の話し方なんかじゃない!!)
ふと我に返って、自分らしくない口調をロカに対して使っている事に気付き、困惑し出した小夜美。
『混乱するかも知れないですが、今のあなたは、サーミ王女様としての記憶が戻りかけている状態なのです。私も刑期を終えようとした時に、その状態にしばらく悩まされました』
ロカの発言には、違和感が残った。
(あれっ......? 私には、ロカがこうして事情を説明したり導いてくれているけど、ロカが別の星で刑期を終えるまでの間は、誰が、その役目をしていたのかな? ロカの恋人という女性......?)
『アセンション以前のパサラミト星人の寿命は、今の地球人同様、限られていましたから、彼女は私の帰還前に召されました。普通に結婚し、亡くなるまで幸せに過ごしていたという事を後から人づてに知りましたが......』
小夜美の疑問に対し、少し皮肉めいたような言い方をしたロカ。
その言葉で、ロカが刑期を終えて帰還する前に、恋人を失っていた事を知った。
((私のせいで、本来結ばれるはずの恋人同士を引き裂いてしまった......ごめんなさい、ロカ))
小夜美の口を借り、サーミの気持ちで謝つた。
その時、サーミ王女の溢れるような想いが小夜美に伝わり、ロカは、サーミ王女にとって初めて恋をした相手なのだと気付いた。
そして、自分の恋心には封をして、ロカがその恋人と幸せになって欲しかったというサーミ王女の願いも。
果たせなかった願いに気付いた途端、また切なさが込み上げ、止めどなく涙が溢れて来た小夜美。
(これは、サーミ王女の心? それを知った私の心?)
『そうして私の犠牲になった想いの分も、あなたが、この刑期を無事終え、パサラミト星へと無事に帰還出来ましたら、報われる事になります』
サーミ王女を励ますように言ったロカ。
((その為に、今の私が出来るのは、何かしら?))
『それは、私から申し伝える事ではありません。あなたなら、きっとクリア出来ます。ご自身の心に従って行動して下さい』
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