第17話 流刑の星

 夕食に誘われた時には、店長に不純な動機が有るのかと疑っていたが、思いの外、すんなりと帰宅する事が出来て、ホッとした小夜美。


(店長、意外と紳士だったとは! おごってもらえて良かった~! 店長は別に私に対して下心有るわけでは無く、最近の様子を心配して食事に誘ってくれていたんだ。仕事中はよく怒るし、少し怖い時も有るけど、仕事を離れると案外いい人だったな~!)


 美味しかった中華料理の余韻に浸りながら、小夜美がガツガツと食べていた時の店長の驚き顔を思い出し、1人でに笑えて来た。


『良い職場ですね』


 ロカの声が脳内に響いて来た。


(まあまあ、いい職場だと思う。私、なかなか長続きする仕事が無くて、今までで一番長く続いている職場だから......)


『ちなみに、店長さんは、あなたに対して下心が全く無いわけではないですよ。ただ、店長さんとして、店員を労わる気持ちの方が下心より大きい状態です』


 小夜美の心を読んで助言したつもりのロカ。


(ロカ、あなたね~! そうやって、勝手に人の心を読むなんて失礼じゃない! ロカは、私だけじゃなく、周りの人の気持ちまで読めるの?)


 ロカには、てっきり、モニター用の金属が埋め込まれた自分だけの情報しか届いていないと思い込んでいた小夜美。


『そのような能力を持ち合わせていない地球の人々には、抵抗有ると思いますが、私達には普通に備わっていて、日常的に用いている能力なので』


 悪びれるという心理状態など全く無いように、ロカは言った。


(私には、短いは短いけど、辛うじて1日1時間のoff時間を用意してくれているものの、その他大勢の地球人は、彼らのそういうプライバシーは全く無視して、好きな時に観察して、心の中まで全てお見通しって事なの? それって何だか......あなた達にとって、地球人というのは、実験や観察用のモルモットのような存在みたいじゃない......?)


『地球人も我々の星の人々のようにアセンションしたあかつきには、誰もがこの能力を得る事になります! あなたの刑期もそれまでには終わらせ、早く私達と同様なレベルになり、その能力を生かして頂けたらと願っている次第です』


 ロカの言葉は、小夜美にとってとげの有る事が多いが、今まで以上に引っかかった言葉が有った。


(刑期って......? 私は、やっぱり犯罪者扱いされているって事なの.....?)


『大変申し上げにくいですが、あなたは、現時点では、まだ罪人です。私もかつてそうでしたが、幸いにも私の流刑星は、地球とは別の少しレベルの高度な星だったので、あなたより早く刑期を終える事が出来ました』


 ロカのその言葉で、ハッと今朝の夢で見ていた、サーミ王女と近衛兵とのやり取りを思い出した。


 近衛兵が罪人になったのは、サーミ王女に同行したせい。


 いつも小夜美にとって、辛辣な態度を示す様に感じられていたロカだったが......かつては、自分の過去世であるサーミ王女のせいで、重い罪を背負い、恋人とも引き離され、1人流刑星で刑期を終えたのを察した。


(......ごめんなさい)


 全てを見せられたけではなく、記憶も断片的にしか甦ってはいないが、ロカ自身には非が無く、サーミ王女の巻き添えで、彼とその恋人の運命を狂わせた事だけは、疑いようがなかった。


『謝るのは、記憶が戻ってからにして下さい。それに、あなたに強要されたわけではなく、同行しましたのは私の意思でしたので、お気に留められること無く』


 罪を着せられてもなお、小夜美を気遣うロカの言葉により、涙が溢れ出した。

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