第8話 バック トゥ ジ アース
「では、以上を持ちまして、貴方には、今まで通りの日常生活に戻ってもらいます。しかしながら、元通りと思って、ここでの出来事の事を夢だと勘違いしたり、忘れてしまうような事にならないで下さい。元の生活とはいえ、モニタリングされている事を常に意識しながら、1日に与えられている合計1時間のoff時間を貴方なりに有効に使用して下さい」
ロカは、微笑んでいるように感じられるような顔から形式的な表情に戻り、大切な内容を話している旨を小夜美に認識させようとした。
(ロカ......日本人の容姿のままなのに、また鉄仮面みたいなカチカチの表情になってしまってる。さっきの笑顔の方が、親近感湧いて良い感じだったのに.....なんて思っている場合ではない!)
いつまでも、のほほんとロカの表情を観察してられない様子で、急に慌て出した小夜美。
この場所に到達する前のような、あの長く続いた強烈な圧迫感の苦痛な時間を思い出したのだった。
「もしかして、日常生活に戻るっていうのは、あれをまた......あの顔とか体の骨が歪みそうな凄い強圧で、長い間苦しむ状態がしばらく続くやつを体験しなくてはならないって事なの?」
あの苦しみだけは、もう金輪際御免と思っていた小夜美。
「心配には及びません。なぜなら、下降は、それほどでも無いからです。トンネルのようなといいますか、そうですね、例えば、滑り台の登る時と滑る時の事を想像して頂くと理解しやすいと思うのですが」
(滑り台......? 上りは階段で、少し時間がかかるけど、滑る時は、ほんの一瞬で終わってしまう楽しい状態......?)
ロカの説明が、すんなりと理解出来、ホッとした小夜美。
「なるほど~、戻る時は、滑り台の滑る状態程度の衝撃しかないのだったら、楽勝~」
(......と思っていたのに......すっかり、だまされてしまった! 宇宙人のロカの言葉を信用した私がバカだった)
往路の時ほど長い時間と強い圧ではないにしろ、かなりの間、強力に身体を締め付ける状態が続いていた。
ロカの甘い言葉の後で、油断していただけに、それは、思いの外、苦しく感じられた小夜美。
(......これ、いつになったら終わるの? さっきのとこれで、私、多分、もう寿命10年は縮まったに違いないんだから! なんで、こんな苦しい思いを私ばっか、体験しなきゃなんないの~! この期に及んでも、私、全く実感無いんだけど、本当に、バルサミコ酢とサラミのような星から来た、宇宙人なの?)
他の地球人が一生体験しなくても良いであろう死をも意識するような辛い体験を自分だけが、何故か何度も課せられてしまっている事が苦痛だった。
(しかも、今までの生活に戻ってからも、24時間ずっと監視されている状況って......私、どれだけ、前世で悪業を働いていたの? 思い出したくないような前世記憶しかなかったりなんかして......)
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