第31話 魔の三階層の謎を探せ!ってお話

 俺達の前には地下二階層へと降りる階段がある。


「このダンジョンは異常だな」

「何か変なのか?」


 前衛組を男子チームに変更し、俺は紫色の魔眼封じの眼鏡を外して、地下二階を【透視 中】で見ようとしたが、階下の様子を見る事が出来なかった。透視で見えているのは土だけだ。しかし階段は地下に伸びている。


「透視ではこの先には土しかないが、未来視では地下に降りる俺達が見える。俺達はいったいどこに降りて行くんだ?」

「転移系ダンジョンね〜」


 地下一階層の戦闘では魔法組のリリアンさんが謎の言葉を言った。


「何だそれは?」

「穴掘り対策のダンジョンよ~」

「「「穴掘り対策?」」」


 リックやローランドも知らないようだ。二人とも何それって顔に書いてある。一先ず紫色の眼鏡を付けて、リリアンさんの話に耳を傾ける。


「穴掘り対策ってのは~、ダンジョンのフロア攻略を無視して、真下に穴を掘って進む階層攻略方法なのよね~。強いパーティーだと階層の序盤攻略をスキップしたり~、中階層攻略の途中で登り降りするのに便利とかで~、ダンジョンに~、穴を掘る人達がいるのよね~」


「ちょっとリリアン! 説明はいいんだけど、何で胸を上に下にやってるのよ! 男子がみんなガン見じゃない!」


「え~とお、登りぃ降りぃみたいな感じ~?」

「いらないからそれ!」

「えぇ~、レベッカもやってみたら~」

「殺す!!」


 何故か登り降りの表現を巨メロンでやって頂いたリリアンさん! ゴチです!!

 しかしリリアンさんは、レベッカさんに頭グリグリの攻撃をくらっていた……。


「で、転移系ダンジョンってどういう事だ?」

「ぞ、ぞればあああ~ぐるじい~~」


 リリアンさんはレベッカさんにチョークスリーパーを掛けられ、チョークチョークとアピールしていて話せそうに無いので、代わりにマルセルが説明してくれた。


「転移系ダンジョンってのはね、次の階層が別の場所や別の空間にあったりする超魔法的ダンジョンなんだ」


「だ、ダンジョンってそんな事になっているのか!」

「かなり特殊なダンジョンだよ。だからこのダンジョンも見つかって二百年も立つのに未踏破ダンジョンで攻略難易度★五なんだよ」


 凄えな! ダンジョンって! てっきり地下へ地下へと繋がっているもんだと思っていたが、別の場所とか別の空間って、どうやって作られてるんだ!?


「まあ二階層は既にマップも作られているし、初心者冒険者でも帰って来れるレベルだ。とりあえず降りて見ようぜ」


 リックの提案に皆が頷き、俺達は二階層へと降りて行った。



「おおおー! 凄えな! 魔核だよ! 魔核!」


 二階層に降りて倒したボブゴブリンから十一cmぐらいの赤いビー玉が落ちた。これが魔核だ。


「その大きさなら金貨三枚ってとこだな」

「凄えええ! 金貨三枚かよ! 大金じゃないか!」

「「「………………」」」


 あれ? みんなの反応が薄いぞ? 金貨三枚だよ! 村なら半年は暮らせる大金だぞ!


「……アベル。魔法の武器が幾らか知ってるか?」

「いや、知らないが?」

「安い魔法付与のダガーでも金貨五十枚。俺達が使っているクラスなら金貨五百枚はするな」

「……は? 金貨五百枚ぃぃぃ!!」


 金貨五百枚だとぉ! 村なら一生遊んで暮らせるぞ!


「まあ、そう言う訳だから、もっとデッケえ魔核探さないとな」

「………………だな」



「ハアッッッ!!」


 ミアさんがオークに止めを刺した。初めはオークにビビっていたミアさんだが、今は剣に迷いがなくなり、華麗に戦う姿が美しくも感じる。


 二階層はゴブリン、ボブゴブリン、ラージスパイダーやジャイアントラット等の低級モンスターに加えて、オークも出現している。オークはたまに小さいながらも魔核を落とす。魔核は今のところ三個だから金貨九枚ってところか。


「いよいよ魔の地下三階層だな」


 俺達の前にはニ百年もの間、踏み込んだ者が戻る事の無い魔の地下三階層へと続く階段が、暗い地下へと繋がっていた。みんなの顔にも緊張の色が見える。


「用心には用心を重ねるべきよ」

「そうだな。アベル、何か見えるか?」


「やはり土だな。この階段も転移系ってやつだ。未来視では階下の扉前までは辿り着いている未来が見えている。どうする?」


 俺達はここに来る迄に、何故誰も戻って来れないのか幾つかのパターンを考えていた。即死空間や即死転移等は最悪だし、最下層に行かないと帰れないとかだと、今の装備だと厳しいって言うか全滅だろうな。


「まあ、降りて見ようぜ。未帰還の三階層でも最初の部屋からは帰って来てる奴もいる。そこまでは行ける筈だからな」



 魔の三階層の扉。取り分け豪華な訳でも無く、多少は装飾されてはいるが、二階層と変わらない両開きの石の扉だ。何も情報が無ければ普通に入ってしまうだろう。


「開けるぞ」


 リックが右側、ローランドが左側の扉を開ける。俺の未来視でトラップが無いことは確認してある。


 開かれた先には五m四方の小さな小部屋、正面と左右に通路が有るのが、ここからでも見える。


「ほら行け」


 リックが途中で捕まえた七匹のネズミを部屋の中へと放した。勿論、俺達は扉から先には踏み込まない。何が理由で帰還できないのかが不明だからだ。


 ネズミ達は逃げるように真っ直ぐ走り、正面の暗い通路へと消えて行った。


「しばらく様子見だな」


 ローランドがそう言って腰を下ろすと、続いてリックやレベッカさんも座りこむ。そしてみんなも座りこんだ。


「見える? アベル」


 俺の隣でミアさんが声を掛けてきた。


「ああ、大丈夫だ」


 俺は魔眼スキル【透視 中】と【暗視】を使って三階層に入って行ったネズミ達を見ている。


 ソフィアさん、ルフィアさんも【超聴】のギフトでネズミ達の足音を追跡している。


 さて魔の三階層で何がおきるやら。



 中に入って行ったネズミ達は生きている。俺の透視にはネズミ以外にも、徘徊しているモンスターも見えている。二階層に比べてオークが多い。更に厄介そうなのがゾンビだ。ここで死んだパーティーがゾンビとなって徘徊している感じだ。かなりの数のゾンビがいる。


「「「えッ!?」」」


 突然開いていた扉が消えて、間口には閉まっている扉が現れた!? 突然の事にみんなが驚いているが、俺とソフィアさん、ルフィアさんは違う事で驚いていた。


「「「ネズミが消えた!?」」」


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