第30話 ダンジョンに行ってみたってお話

 週末の休みに俺達は街から少し離れた場所にあるダンジョンに来ていた。


「リック、帰らずの迷宮はヤバくないか?」

「ローランドさんとも有ろう方がビビっていると?」

「違うでしょリック。このダンジョンって発見されて200年も立つのに攻略フロアが地下二階まで。三階を見た者は一人として帰って来ないっていう難易度★五のダンジョンよ」


 リック、ローランド、レベッカさんの前衛組がダンジョン入口の広場に座り、装備の確認をしている。


「しかし、この近所で未踏破のダンジョンってここしか無いぜ。それにアベルがいるんだ、何とかなるだろ?」


 みんなが俺を見る。俺達のパーティーは前衛三人組に加えて斥候に俺とソフィアさん、ルフィアさん、前衛のバックアップにミアさん、魔法担当のマルセルとリリアンさん、回復担当でコレットさんの十人になる。


「俺?」


「ああ。魔の三階層を透視するんだ。何故誰も三階層から帰って来れなかったのか。勿論、危険な場合は俺達も踏み込まない。しかし……」

「しかし行ける場合はダンジョンの秘宝を手にする可能性がある!」

「おい、ローランド! 美味しいセリフ横取りすんなよな」


 アハハハとみんなで笑う。パーティーか! いいな! なんか冒険者みたいだ!



「この先にゴブリンが五匹だ!」


 暗いダンジョン内をマルセルとリリアンさんの杖に魔法の光を灯し、俺達は隊列を組んで進んで行った。


先頭は

リック

【剣士 ギフト:武強 装備:ロングソード(魔) ハーフアーマー】


ローランド

【槍士 ギフト:襲歩 装備:ハルバート(魔) ハーフアーマー】


二列目は俺

【狩人? ギフト:魔眼 装備:ショートソード、ショートボウ レザーアーマー】


三列目は

ミアさん(ミレリア)

【剣士 ギフト:雷聖 装備:ロングソード(魔) ライトアーマー(魔) スモールシールド(魔)】


 雷聖のギフトはミアさんの心が封印しているみたいだ。


レベッカさん

【槍士 ギフト:操技 装備:双竜槍(魔) ハーフアーマー】


四列目は

マルセル

【魔術師 ギフト:水魔 装備:魔術師の杖(魔) ローブ(魔)】


コレットさん

【白魔術師 ギフト:巫女の祈り 装備:祝福の杖(魔) 祝福のローブ(魔)】


リリアンさん

【魔術師 ギフト:炎魔 装備:魔術師の杖(魔) ローブ(魔)】


五列目は

ソフィアさん

【密偵 ギフト:超聴 装備:ショートソード(魔) ライトチェーンメイル(魔)】


ルフィアさん

【密偵 ギフト:超聴 装備:ショートソード(魔) ライトチェーンメイル(魔)】


 となった。

 俺以外は魔法具装備だ……。流石は金持ちの家柄だ! 悔しくなんかないぞ!


 俺は紫色の魔眼封じの眼鏡を外し、ダンジョン地下一階層内を【透視 中】で索敵している。……だから女子は俺の前には出れない。

 

 暗い曲がり角から姿を現した青緑の肌をした五匹のゴブリン達。イニシアチブはこちらにある。


 ローランドが飛び出し二匹のゴブリンを串刺しにした。続いてリックが右側のゴブリンを斬り、俺が左側のゴブリンを斬る。残りの一匹もリックがサクッと斬り捨てた。


「魔核は流石に落ちないか」


 倒したゴブリンは塵となって消えていく。ダンジョンモンスターは魔核で作られていると言われている。


 フィールドモンスターは当然生き物であり、死体が残るが、ダンジョンモンスターは魔法生物であり、死体は残らない。


 ダンジョンモンスターは魔核の大きさで強さが決まる。小さな魔核はゴブリン等の低級モンスターになり、大きな魔核は其れこそドラゴン等の凶悪モンスター等になる。


 そして稀に魔核をドロップするモンスターもいる。魔核は高価で買い取りして貰えるので、冒険者達は危険なダンジョンへと入って行く。


 それからゴブリンやコボルト等の低級モンスターと数回戦闘をして隊列を変える。


 前衛はミアさんとレベッカさん。二列目のフォロー役と索敵役にソフィアさんとルフィアさん。三列目にコレットさん達、四列目の殿に俺、リック、ローランドが下がった。


 今回のダンジョン探索の目的は二つある。一つは俺の武器購入の為の資金稼ぎ。もう一つはミアさんとコレットさんの実戦経験を詰むことだ。


 白魔術師のコレットさんが活躍する様な危うい状況は困るが、二人が実戦の空気を肌で感じる事は重要だ。


 更にミアさんは実戦での生きた剣を身につけたいと言っていた。


 決闘で戦ったウィリアムも素晴らしい剣技だった。しかし其れは型に嵌まりすぎた剣技で、パターン化し、応用力に乏しかった。


 ミアさんも実戦経験の差で、レベッカさんには剣術の授業で一歩負けているらしい。


「カサカサカサカサ、音がします」

「カサカサカサカサ、十六本」

「カサカサカサカサ、ラージスパイダー」

「カサカサカサカサ、距離ニ十」

「十五!」

「十」

「「目の前!」」


 双子の美少女、ソフィアさんとルフィアさんは超聴のギフトを持っている。一キロ先の針が落ちる音を聞き分ける程の聴力と音響解析能力を持っている。


 相手が発する音、振動音、反響音等から遠くのモノから近くのモノまで索敵や盗聴等が出来るらしい。幽霊だけは苦手だとか。

 

 目の前に現れたのは黒い巨体のラージスパイダー。


「炎槍双竜激!!」


 レベッカさんは鎖が仕込まれた両槍の多節槍を使う。彼女のギフト【操技】は鎖や鞭等を自由に操るギフトだ。


 一本の槍を振り回し、其れが二本の鎖槍となってラージスパイダーに伸びて行く。炎槍の名の如く穂先は炎に包まれている炎の魔槍だ。


 二本の槍が二匹のラージスパイダーに突き刺さり絶命した。凄い攻撃力だ!


「……私の獲物が」

「す、スミマセン、ミレリア様!」


 一槍二突で倒してしまったレベッカさんがミアさんに謝


 その後はミアさんの剣技が活躍する場面もあり、俺達は地下二階層に降りる階段まで来ていた。


「このダンジョンは異常だな」


 俺の【透視】がこのダンジョンの異常ぶりを捉えていた。



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