第28話 三つの魔核を破壊しろ!ってお話(第二章最終話)

 一旦ウィリアムから離れて遮蔽物の影に俺達は隠れた。


「マジ助かった、ありがとな」

「エヘヘッ」


 ソフィアさんの頭を何気に撫でたらソフィアさんはメッチャ喜んでいた。


「しかし厄介な鎧だな」

「首を落とせば死ぬ」

「……それってウィリアムが死ぬよね?」

「あんなアホ、死んでも仕方ない」


 ルフィアさんが物騒な事を言うが……。


「いや、それでも同じ学院生だ。俺には殺せない」

「……アベルもアホだな」


 ルフィアさんがクスっと少し笑って呟いた。


「あの鎧、どうやったら壊せるか知ってるか?」

「アベル君、マジックアーマーは魔核を壊さないと破壊出来ないよ」

「赤いコアなら一つ破壊したが直ぐに再生しやがったぞ」

「吸血装甲は不死の鎧と呼ばれている」

「きっと他にも魔核が有るんだよ」


 他にもか、なるほどな。


「俺の【正鵠視】が、三カ所の魔核を確認している」

「「正鵠視?」」


「多分、何処を攻撃するべきかの目標ターゲットを見抜く魔眼だ。【急所】に似ているが、急所以外の攻撃ポイントを見ることが出来るみたいだな」

「一つ破壊しても他の魔核が壊れた魔核を再生させる」

「多分、三つを同時に破壊しないと壊せないよ」

「そういう事か……」


 加速視で近接して、腹部、右胸と破壊しても左胸は触手が邪魔で破壊出来ない。さて、悩み何処だな。


「私達も手伝うよ」

「三人で一つずつ破壊する」

「二人の武器は?」

「「勿論、マジックウェポン!」」


 双子の二人が息を合わせて銀色に輝く刀身の剣を抜いた。勿論って、マジックウェポンは勿論じゃ無い気がするよね?



「ウィリアム! こっちだッ!」


 遮蔽物を破壊して俺を探していたウィリアムの前に姿をさらす。俺に気が付いたウィリアムが胴鎧から四本の触手を伸ばして攻撃してくる。


【加速視】!【未来視】!


 ゆっくり流れる加速世界で触手を交わしながら、未来視で探す。

 俺、ソフィアさん、ルフィアさんの同時攻撃による魔核破壊の未来。


 俺の一挙手一投足で未来は様々に変化して行く。加速思考が幾つもの行動シミュレーションを行い、僅かな時間で俺は多くの未来の可能性を見る。その中には俺達がウィリアムに殺される未来も存在していた。


 ソフィアさんとルフィアさんは遮蔽物に身を隠して待機している。俺の合図で飛び出す手筈になっていた。


 黒い触手は時間差をつけて俺を狙って伸びてくる。余り早いタイミングで躱すと追尾して追い掛けてくる。

 曲がる角度は六〇度程度までで、流石に九〇度でカクっとは曲がっては来ない。


 黒い触手は伸びては戻り、再び伸びて俺を狙う。黒い触手を躱してから概ね三秒は余動時間で伸び進み、胴鎧に戻りだす。三秒もあれば俺はウィリアムの懐に潜り込める。


 胴鎧から次々と伸びる黒い触手。一本目を右によけ、二本目を下、三本目を右、四本目を下に躱してから四本同時に剣で払い上げる。


 四本の触手が鞭の様に暴れまわり胴鎧へと戻った。近接しようとしている俺を狙うウィリアム。次に来るのは触手の四本斉射と未来視が見ている。


「GOーッ!!」


 俺の合図で飛び出す双子の美少女姉妹。


 右と左の遮蔽物から現れた銀色に輝く剣を持つ美少女にウィリアムも反応している。

 胴鎧から触手四本を俺に放ち、左右の腕の触手で右のソフィアさんと左のルフィアさんを狙う。


 左右の二人に伸びた触手。彼女達はそれを飛んで躱して空中で大きく伸身宙返りをした。


 躱された事を覚ったウィリアムは触手を戻す。宙返りの時間は触手を戻らせる為の時間稼ぎだ。二人は左右に伸びた触手の上に着地すると、触手の上を走り始める。


 全力で風のように走る速度+触手の戻る速度も加わり、俺の加速世界のスピードに彼女達も追い付く。


 波打つ触手から二人が飛び降り、その反動を理由して大地を蹴り左右からウィリアムの胸に飛び込む。


 俺もそのタイミングで低い姿勢で四本の触手の下から腹部の魔核を狙う。


「「「ハアッッッ!!」」」


 三本の剣が同時に吸血装甲の魔核に突き刺さり、ピキッピキッと魔核に亀裂が走る。


 吸血装甲の赤黒い光が消え、三つの魔核を繋ぐ様に亀裂が走り始めた。


「離れろ!」


 俺達は剣を引き抜き後方に跳ねる。引き抜いた魔核、そして亀裂から真っ赤な血が吹き出した。


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 頭を抑え叫ぶウィリアム。伸びていた触手が霧散し、ウィリアムに突き刺さっていた触手も塵のように消えていく。


 吸血装甲が粉々に砕け、バラバラと大地に落ちる。ウィリアムの顔にも僅かに血の気が戻るも、白眼を向いてバタリと倒れた。


 終わった……。


「ォッシャアアアアアアアア!!!」


 俺は剣を高く掲げた。


「「「ワアアアアアアアアアアアア!!」」」


 競技場の観客席からも歓声が大きく湧き上がる!


 スタンディングオベーションの観客席。俺は応援してくれていたミアさん、コレットさん、リック達に手を振る。


 ………………あッ。


「アベルく~ん!」


 ソフィアさんが駆け寄ってきて俺に飛びついてきた。


「凄いよアベル君! やっぱりアベル君は凄過ぎだよ~!」


 ニコニコと俺の胸にしがみ付き微笑むソフィアさん……と可愛いお尻……。


 俺は慌てて鼻を押さえるが、指の隙間から赤い血が流れ出す。


「……あ、アベル君? 眼鏡は?」


 サーっと青い顔になったソフィアさん……。


「無くした……」


 辺りは破壊された遮蔽物の瓦礫の山だ。何処で眼鏡を投げ捨てたかなんて覚えてもいない。


「……アベル君はやっぱりエッチだね」


 慌ててお尻から目を逸らす……が、逸らした先は観客席……。


 俺の視力は【透視】の恩恵でやたらと良い……。見えます! 見えてます! 全然全部見えてますぅぅぅ!


 押さえる手を押しのけて、噴水の如く大量に鼻血が放出された。


「「「キャアアアアアアアアア!!」」」


 競技場に轟く女子の悲鳴!


「エッチ!」「変態!」「変質者!」「死ねばいいのに!」「バカ~!」「アベル君最低!」


 勝利者への健闘を称えた歓声は、怒声と罵声だったとさ?



◆◆◆◆◆

【作者より】


第二部が終わりました。

 ここまでお付き合い頂きありがとうございます(^^)


 なんとか週間100位内にも入る事が出来ました。


 現在6万字。あと三分の一、頑張って執筆しますのでお付き合いのほど、宜しくお願いします(^^)


 ストックが無くなりましたので、少し投稿ペースが落ちますが、よろしくお願いします。


 面白いと思って頂けましたら、目次ページのタグからレビュータグで、☆を★に評価よろしくお願いします。


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