第24話 ミアさんのギフトって何だっけ?ってお話
「……今の悲鳴はソフィアね! もう! あの子ったら聴き耳たててたんだわ!」
「ソフィアさん? 聴き耳?」
さっきの悲鳴は事件ではなかった。
「ソフィアのギフトは超聴。遠くの音を聞き分けるギフトよ。ルフィアもね。多分アベルが大声出したから吃驚したんだと思うわ」
ソフィアさん……盗聴か……。怖いな……。
「超聴か。それも凄いが、ミアさん! 雷聖ってマジか!?」
俯き頷くミアさん? 何やら肩を落として元気が無い? 何でだ? 雷聖と言えば、こと攻撃に於いては剣聖をも上回る超攻撃型ギフトだ。お伽噺に出てくる雷聖の戦士はどれもカッコ良くて、凄まじい力で強大な魔物を退治していた。
「雷聖のギフトホルダーって伝説級じゃないか! 凄えじゃん!!」
「……凄すぎたのよ」
俯いたままのミアさんがぼそりとこぼした言葉。ミアさんはミアさんの十二歳の儀に起きた事件を話してくれた。
「十二歳の儀で私に雷聖のギフトが授かった時には、父も母も兄姉達も、そして私も凄く喜んだわ……。当代にはいない雷聖のギフト。伝説級のギフトがリムフィリア家の娘に授かったのだから当然よね」
ミアさんの顔に暗い影がかかる。
「私は父に連れられて領内のペルシナ草原地帯に行ったわ。私のギフトの力を見る為に……。はしゃいでいた私は何も考えていなかった。雷聖の力を使える。それだけが嬉しかった。そして使ったわ。雷聖の畏るべき力を……」
ミアさんは天井を見上げ瞳を閉じた。
「晴れた空だったわ……。草原地帯は青々とした草葉が爽やかな風にゆれ、鳥や蝶達が空を飛んでた……。気持ちいい草原だったのよ……」
泣いていた……。涙が頬を伝い落ちる。ミアさんは肩を震わながら俺に語る……。
「雷聖の力……。晴れた空に突然現れた雷雲……。今までに見た事も無い暗く重い怖ろしい雷雲……。その雷雲から落ちた稲妻は轟音と共に草原地帯を消し去ったわ……」
天井を見上げていたミアさんが俺の瞳を見つめ、俺の制服をギュッと握りしめる。瞳からは大粒の涙が流れ落ちていた……。
「ねえアベル……。ペルシナ湖って知ってる? 三年前まではペルシナ草原って呼ばれていた場所にあるのよ……。あの穏やかで広大な草原は一瞬にして蒸発したわ! 私の雷聖の力で! こんな怖ろしい力! 誰が使うの! 誰に使うの! 無理よ! 私には使えない! アベルがあの男と戦っている時も使えなかった! アベルが死にそうになってるのにだよ! 使ったら! 雷聖の力を使ったらこの街が亡くなるから! やだよ! こんな力やだよ! いらない! 私にはいらないよぉー!!」
そう言ってミアさんは俺の胸に顔を埋めて、震えながら大きな声で泣いてしまった。
大きな力……。畏怖されるギフト。
デビルアイの魔眼やギフトイーターを生み出す喰技のギフトがそうであるように、雷聖のギフトも……力を扱えない者が持てば身を……いやこの国を滅ぼす……。
俺はミアさんを優しく抱きしめた。震えが少しでも治まるように……。
そして俺はヤツの言葉を思い出した。
『君を公園で見かけた時に喰べておけばよかったと後悔していたんだ。君みたいな絶世の美少女はそうそういないからね。それに君を食べれば僕は最強になれるからね』
◆
翌日の朝、ミアさんはいつも通りの笑顔だった。そして俺の今日の決闘の事を心配してくれた。決闘の時間は今日の放課後。場所は学院の競技場だ。
学院内でも俺とウィリアムの決闘の話題であちらこちらで盛り上がっている。廊下を歩いていると
「ウィリアムがあのアベルに勝てるのかねぇ」
「ギフトは禁止なんだろ?」
「ギフトを使わなくても、あのリックにアベルは勝ったらしいからな」
「じゃあアベルで決まりだな」
とか
「ねえねえアベル君の決闘見に行くう?」
「え~~~ッ! また裸見られちゃうんじゃない!?」
「ギフト使わないみたいだよ。眼鏡してるから大丈夫だよ」
「でもほら、この間は寮で『眼鏡を食堂に置き忘れたのはわざとかも事件』があったじゃない」
「あの時は吃驚したよね~。アベル君が眼鏡無しで廊下をフラフラ歩いてるんだもん。私、見られちゃったかも~」
「私もだよ~」
「「アベル君って変態だからね~」」
とか……ってオイ! 廊下で人を変態呼びするのは止めて下さい! あの時は本当にうっかり忘れたんですよ~! ごめんなさい!
◆
そして放課後、俺はウィリアムとの決闘をすべく学院の競技場へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます