第23話 ダンスの練習にはご注意をってお話

 学院長室を後にして寮へと帰宅した。学院長先生が「生徒会長は少しお話があるから残って」と言い、新生徒会長のミアさんが「え、今日は用事が……」と渋ったが、「直ぐに終わるわよ」と言われ渋々ミアさんは一人残った。



 ミアさんは中々帰ってこなかった。腹減ったな。先に食事するのも気が引けたので部屋で待っていたのだが、しかし時計を見れば七時を過ぎている。


「ただいま~。もう姉様ってば少しとか言って二時間も話す………………」


 俺達を見てミアさんが固まった?


「あ……あなた達……何をやっているの?」


 俺達、つまり俺とソフィアさんに向かって質問をしているらしい。


「何ってダンスの練習だが?」


 ミアさんが帰ってこなかったので、代わりにソフィアさんがダンスの練習を買って出てくれたと言うか、押し込んできた的な?

 ミアさんの肩が何故かぷるぷると震えている?


「ゾブィィィアアアアアア~~~」

「ヒッ~」


 み、ミアさん? な、なんか目が怖いよ?


「なああぁ~んで、あなたがあ~、ここにィィィ~、いるのかしらんんんんん?」

「え、あ、そのですね……、アベルさんが、ダ、ダンスを……」

「ダンスををを???」

「み、ミレリア様と、ダ、ダンスの練習……予定……みたいだったんですが……」

「……ですがあああ何かしらあああぁぁぁん」


「み、み、ミレリア様……な、な、中々帰ってこなかったみたいだし……」

「ほおおおおおお~」

「が、学院長先生お話し……も、盛り上がっていた……みたいだし……」

「ほおおおぉぉぉ~~~」

「わ、私ったらほら……一キロ先の……針が落ちる音とかも……聞こえてたり……とか?」

「へえええええええええ~~~~~」

「じ、時間が勿体ないかなぁ、かなかなぁ、みたいな~? かな?」


「其れで胸元の広おおお~~~い素敵なドレスを上げて寄せて着ているとおおお~?」

「ヒッ! い、いえ、その、ぱ、パーティーとか、その、み、皆さんはもっと上げて寄せてええ~、す、凄いから~」

「凄いからああああんんん?」

「あ、アベルさんには、そ、そう! 実績訓練! 実績訓練何ですよ!! …………ヨ?」

「ゾブィィィアアアアアア~~~ん、ちょおおおっと来なさあああい」

「ヒイイイイィィィ~~~」


 ニコニコ笑っているミアさんに、涙目のソフィアさんが連れて行かれてしまいましたとさ? いや、とさっじゃなくて飯いい~~~!! 腹減ったぞミアさ~~~ん!!



「流石はミアさん、ダンス激ウマだな!」

「ま、まあね」


 夕食を食べて部屋でダンス練習の再開だ。ソフィアさんはその後戻っては来なかった。

 

 ミアさんにソフィアさんの事を聞いたら満面の笑みで「ソフィアが後は宜しくと言っていたから気にしなくて大丈夫ヨ」と言っていた。

 うん、きっと大丈夫なんだよな! うん! うん!


「アベル……」

「どうした?」

「明日……本当にウィリアムと決闘するの?」

「まあ、そうだな」

「……怪我とかしないでよね」

「看護治癒士が付くから大丈夫だろ?」

「そうじゃないわよ! 心配って事よ!」

「心配してくれるのか?」

「…………る、ルームメイトだからね」


 ミアさんは顔を赤くしてぷいっと横を向いてしまう?


「そうか、そうだな。ミアさんは優しいな」

「……違う。私は……戦いが怖いから……」


 えてして女の子はそういう者だろ? 幼なじみのミーシャや、きっとレベッカさんは違うだろうが、サリーやコレットさんはそんな感じだしな。


「あの時も……あの男に襲われた時も……怖くて戦え無かった……」

「いや、あの男は特別だよ。気にしない方がいい」

 

 するとミアさんは首を横に振った。


「……違うのよ。怖いのは私……私の力……」

「ミアさんの力?」


 そういえばミアさんのギフトって何だ? 聞いて無かったな?


「ミアさんのギフトの力か?」


 こくりと頷くミアさん。


「ミアさんのギフトって何だ?」

「……………………いせい」


 ボソボソと言ったのか、上手く聞き取れない。


「悪い、もう一度言ってくれないか?」

「……雷聖……」


 俺の耳がおかしいようだ。雷聖と聞こえたがそれは有り得ない。雷聖とは伝説級のギフトだからな!


「すまん、耳がおかしいようだ? もう一度言ってくれないか?」

「雷聖よ! 雷聖! 雷聖なのよ~~!!」

「えええええええええええええ~~ッ!」

『きゃあああああああぁぁ~~』


 思わず大声を上げてしまった。そして今、女子寮内で女性の悲鳴が聞こえた。


「ミアさん、また事件か!?」

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