第17話 生徒会選挙活動は始まっていたってお話
あの男は世界的な犯罪者だった。名を吸血のモルドレッド。吸血鬼と思われていたモルドレッドは、美少女だけを攫い喰らうギフトイーターだった。
古くはニ百年も前にまで遡る犯罪記録が有り、奴は長い時代を生きて、多くの美少女が犠牲となっていた。
俺はあの事件の後、三日間も寝ていた。目覚めた日も学院を休む事となり、ミアさんとソフィアさんがずっと部屋にいてくれた。ソフィアさんが少し……いや、かなり優しくなったのは気になるが……?
◆
「アベル! 大丈夫か!」
ミアさん、ソフィアさん、ルフィアさんと一緒に教室に入るとリックが俺の所に飛ぶようにやって来た。
因みにソフィアさんはイメチェンとかで、シルバーブロンドの髪の前髪に、紫色の細いメッシュを一房入れている。「これでルフィアとは間違えませんよね! 私がソフィアですよ!」と、やたらアピールされたが、昨日ルフィアさんと間違えた事を怒っているのか?
「もう大丈夫だ。心配かけた……か?」
「か? じゃねえよ! マジ心配したぞ! 死にかけたって話しじゃないか! 本当に大丈夫なのか!?」
あの時、俺の心臓はほぼ止まっていたらしい。ソフィアさんの応急処置、駆け付けたルフィアさん、更には学院長先生が俺を女子寮まで運び、コレットさんのギフト【巫女の祈り】で止血してくれたとの事だ。【巫女の祈り】は回復系ギフトで大怪我も立ち所に治せる凄いギフトだ!
とは言え流れ出た血の完全回復は出来ないらしい。ハイシャル先生も来てくれて、体力回復の為の治療を施してくれていた。
「無理はしないようにと、ハイシャル先生からは言われているがな」
「だな! しばらくは無茶すんなよ」
リックが俺に肩組みして来たので、俺はリックと一緒に久しぶりの机に向かった。
◆
「選挙運動最後の日ですが、ミレリアさん、コレットさん、ルフィアさん、ソフィアさん、頑張りましょう!」
朝のホームルーム、担任のリュシル先生が気合いの入った目で熱く語っている。
そうか、今週は生徒会候補者の選挙運動週間だっんだな。俺が怪我で休んでいる間、ミアさん、コレットさん、ソフィアさん、ルフィアさんは、俺の看病の為に学院を休んでいた。
結果、俺が四日休んだ為に、今日の一日しか選挙運動が出来ない事になってしまった。
「畜生~! ウィリアムとバンジャマンの野郎が邪魔しなけりゃな!」
離れた席のリックのぼやきが聞こえた。ウィリアムは一組の男子、バンジャマンは隣の四組の男子だったな。朝、通った廊下に候補者の名前が掲示されていたのを思いだす。
選挙候補者
一組 ウィリアム
二組 フローラ
三組 ミレリア
三組 コレット
三組 ルフィア
三組 ソフィア
四組 バンジャマン
五組 ジュスタン
六組 セブラン
七組 トマス
どうやら三組のみんなが選挙運動週間の延長を選挙候補者達にお願いしたが、ウィリアムとバンジャマンが反対したらしい。
リックの話しでは三組の四人が選挙運動出来ないようにして、ウィリアム達が優位に立とうとしているとの事だ。彼等の主張は学院カレンダーの変更は、今後のスケジュールに影響が出るとの正論で、学院側も彼等の主張を通した。
「今日は特別に、先日に参加出来なかったミレリアさん達の候補者演説会も有ります。皆さんで応援しましょう!」
先生は気合いが入っている。確かに生徒会役員が俺を入れて五人もうちのクラスから出たら先生は鼻高だ。候補者は十名、生徒会役員の席は七席で、俺が副会長に確定させられてしまっている為(何でだ!?)、残りは六席になる。
来週の投票では、生徒は二人迄の候補者に投票する事が出来るが、先生曰くうちのクラスは不利らしい。他のクラスは候補者が一名、うちは四名、クラスの組織投票的にはうちは四名に分散してしまっているからだとか?
「先生! やはりあの作戦をやりましょう!」
「…………せ、先生は中立な立場だから選挙運動には口を出さないわ」
リックの言葉に、先生は横を向いて中立と言う。今までだいぶ熱く語っていたが?
「なあ、みんなあ、他にいいアイディア有るか?無いだろ! 今日一日しか無いんだぜ! あの作戦ぜってえ行けるって!」
盛り上がるリックに多くの男子が賛同し、多くの女子が冷めた目で見ている。あの作戦ってなんだ?
しかし、あの作戦とやらは女子達の反対と冷たい視線のプレッシャーにより不許可となった。
ミアさん達の候補者演説会は午後一時から行われるが、生徒の参加は任意だった。週初めに行われた他の候補者達の演説会は全生徒参加している。
……俺の責任だな。俺がアイツにやられていなければこんな状況にはならなかった……。
◆
「アベル、飯に行こうぜ」
昼の時間になるとリックとマルセルが俺を誘いに来てくれた。
「悪い、昼にちょっとやる事が有るんだ」
俺は彼等の誘いを断り席を立った。俺に出来る事はやっておかないとな。
◆
ピンポンパンポン♪
『放送室より本日は特別放送を行います。司会は放送委員(仮)の私、スザンヌ。ゲストには1年三組のアベル君でお昼の一時を過ごしたいと思います』
『俺は1年三組のアベルだ。みんな、少しだけ俺の話しを聞いて欲しい』
『アベル君はあの吸血のモルドレッド事件の関係者で間違いありませんよね』
『ああ』
『事件のあらましを伺ってもいいですか?』
『ああ。事の始まりは週末にミアさんと二人で街に買い物に出かけた時だった』
『え! ミレリア様とお二人で! デートですか!? デートですよね!?』
『いや、ミアさんに誘われただけだが?』
『ほ、ほお~~~! 其れは興味深いですね~。お二人が女子寮の同室暮らしな事は最早周知の事実! 何処まで進んでるんですか!』
『え、いや、そっち!?』
『放送をご視聴の皆さん! 本日は急遽『気になる二人の夜の私生活! え、たまに見えちゃうの!?』に変更してお届けします!』
え~~~~~~~ッ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます