第9話 健康診断で俺の心が終わった(涙)ってお話

 俺の前には赤い顔で仏頂面したミアさんが、衣服を脱ぎ、手で胸と小股を隠して立っている。


「はい、後ろを向いて」


 魔眼封じの眼鏡を外して椅子に座っている俺。横に立つ学院長先生がミアさんに指示をする。プリンと可愛いお尻が見えた。


「ミアさんは健康です。胸のホクロも綺麗に無くなっています」


 ミアさんは真っ赤な顔で俺を睨んでいる……。


「良かったわねミア。じゃあ次、コレットさん中に入って下さい」


 保健室からミアさんが出て行き、コレットさんが中に入ってきた。

 俺が保健室で何をしているかと言うと健康診断の問診だ。しかもする側だ! おかしくないか!?


 午後に予定されていた健康診断。問診の先生は二人来る手はずとなっていた。一人は昨夜あったハイシャル先生。しかしもう一人の先生が学院に来る途中の馬車で交通事故にあい来れなくなってしまった。


 ハイシャル先生は流石に全校生徒は見切れないとの事で何故か俺に白羽の矢が当たった。

 勿論、俺もミアさんも反対したんだが、昨夜に俺が診断眼でミアさんのメラマニン病を発見した実績を買われてしまった。そしたらミアさんも何故か納得してしまったのだ。


 そんな訳で渋々承諾したのだが……だったら男だけにしろよなッ!


 玉のお肌のコレットさん。


「綺麗です……じゃない健康です!」


 コレットさんも顔を真っ赤にして退出していった。続いてレベッカさん。


「本当に見えているのか?」


 レベッカさんは疑いながらも手で胸と小股を隠している。背中側も見て俺は学院長先生にヒソヒソと耳元で囁く。


「レベッカさん、お尻のオデキが少し膿始めているみたいよ。早めに治療して下さいね」


 バッと両手でお尻を隠したレベッカさん。其れだと前が全部見えちゃうんですが……。


「へ、変態~~~ぃ! いや~~~ん!」


 レベッカさんは赤い顔してダッシュで保健室から出て言ってしまった。


 次はリリアンさんだ……ガハッ!

 リリアンさんも手で胸と小股を隠しているが……、隠しているが……。


 手が小さくて胸が大き過ぎる!


「胸がほとんど隠れていません!胸が七分に、手が三分! 先生! 胸が七分で手が三分です! 無理いいいッッッ!」


 俺の真っ赤に染まっていた鼻栓と精神が限界を越えた時だった。


 その後、一旦男子生徒の問診に変えて心を落ち着かせる。


「な、何をニヤニヤ見てんだよ」

 

 診断眼で、リックの体に異常がないかを確認する。

 

「……男の裸っていいよなぁ〜」

「……お、お前……、まさか!」

「い、いや違う! た、ただ心が落ち着くんだよ」


……男子生徒の裸を見て落ち着く俺の心って……終わってないか!?



 一組から三組迄の問診を終わらせ、精根尽き果て教室に戻った俺に待っていたのは、女子生徒達と何故か男子生徒の冷たい視線だった……。



《夜ー女子寮ー女子会》


「アベル君って最低です!」

「エロ魔王過ぎですわ!」

「男の子に裸を見られるなんて、もうお嫁にいけません!」

「不潔です!犯罪です!」


 今日の健康診断の問診で沢山の女の子がアベルに裸を見られてしまった。うん。恥ずかしいのは私も分かる。でも……。


「私はアベルに命を救われたの……」

「……ミアちゃん?」

「私の胸に小さなホクロが出来てたの。アベルが気が付いてくれた……。悪魔の病……メラマニン病……」

「「「えっ!?」」」

「み、ミアちゃん、大丈夫なの! お医者さんに見てもらった!」

「コレット落ち着いて。大丈夫だから。早期発見で完全回復よ。……アベルのお陰でね」

「良かったよ~! ミアちゃん良かったよ~!」


 コレットが私に抱きついてきた。心配してくれてありがとうコレット。


「だから私はアベルの診察眼を信じてる。もし私みたいなまだ気付かない大きな病を持っている人がいるかもしれない。……だから私はアベルの診察に賛成した……。皆さんごめんなさい」


 私はみんなに誤った。男の子に裸を見られた恥ずかしい気持ちは私も分かるから。


「あたしのお尻のオデキ、最近妙に痛いって思ってたらさ、膿んでるから治療しろってアベルに言われたんだ。恥ずかしいからほって置いたけど治療に行こうと思うんだ」


「わ、私は足が痒くて赤くなってたんですが、アベル君が毒虫の腫れだからちゃんとした薬草を使った方が良いって言ってくれましたわ」


「わ、私はおへそが汚れてるって言われました。凄い恥ずかったけど、おへそから病気になる事も有るから少しづつ綺麗にした方が良いって言われました」


「私の場合は~、アベル君が~『胸が七分で腕が三分!』とか言って~、鼻血出して倒れちゃったよ~」


(((テメエのメロンがデカすぎるからだよ! 嫌味かこの野郎! 殺すぞ!!)))


「私は綺麗って言われちゃいました~」


 ポッ


 ちょ、ちょっとコレット! ポッって何よ! ポッって!?


「アベル君、以外と的確だったよね」

「うん。ちゃんと真剣に見てくれてたよね」

「顔を真っ赤にして可愛いかったかも」

「普段は紫眼鏡掛けてるから分からなかったけど、アベル君ってイケメンだよね」

「はい、髪の毛はボサボサだけどイケメンでしたワ」

「あ!私もそう思った!」

「「「私も~~~!」」」


 えっ!? み、皆さん…………?


「意外と狙い目かもね~」

「「「ね~~~~~」」」


 え~~~~~~~~~~~~~~!?


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