第8話 俺にも友達が出来たってお話

 広い学生食堂は寮のようなビュッフェスタイルではなく、メニューから注文をするスタイルだった。


「どうやって頼むんだ?」

「アベル、食堂に行った事は無いのか?」

「村には食堂なんか無かったからな」

「やっぱり面白いな、お前は!」


 笑いながらリックが注文の仕方を教えてくれた。俺はリックと同じA定食大盛りを選んだ。


「へ~、リックは武強のギフトか。羨ましいな」


 武強とは自分の武器を強化する事が出来るギフトだ。レベルが上がるとドラゴンさえも斬れる付与が付くと言われている。


「まだレベルは低いけどな。家は騎士の家系だから親も喜んでいたよ」


「マルセルは?」

「僕は水魔の加護だよ」

「魔術師か!」


 水魔の加護とは水魔法でも攻撃魔法が強いギフトだ。水護というギフトも有り、こちらは支援魔法と攻撃魔法のバランス系ギフトになる。


「二人共羨ましいギフトだな」

「いやいや、役に立つ立たないは別にして、アベルの魔眼【透視】は男のロマンだろ!」

「いや、そうでもないぞ」


 俺は村での、婆さん達の裸族事件の話をした。


「アハハハ! 確かにそうなるワナ!」

「其れで三年も山に引き籠もてたって、凄いねアベル君」


「何やら愉しそうね? 此方の席いいかしら?」


 俺達が座っている八人掛けのテーブルで空いていた方に、ミアさんとコレットさん、クラスの女の子二人が食事を持ってやってきた。


「勿論ですよ! ミレリア様!」


 ミアさんは「ありがとう」と言って着座し、続いて他の女の子達も席に着いた。


「あれ? ミアさん達、食事はそれだけ?」


 女の子達の昼食が矢鱈と少ない。


「午後は健康診断ですからね」

「何でだ?」

「何でもよッ!」


 何故かキッと睨まれた? ……分からん?


「あの~」


 リックがミアさんの連れの二人の女の子の顔を覗き込んでいる。一人は背の高いスラッとしたスレンダー美人、もう一人はコレットさんより更に小さい女の子。


「双竜のレベッカさんだよね?」

「おっ! あたしを知ってるの!」

「やはりレベッカさんか! 昨年の武闘大会、槍術少女の部で優勝するとこ見てたよ!」

「へ~サンキュー! そういうあんたは強剣のリックだろ! あたしもあんたが剣術少年の部で優勝するとこ見てたよ!」


 長身の美人レベッカさんとリックは大会優勝者か! 凄いな!


「今後是非手合わせをお願いするよ」

「いいわよ。あんたの強剣があたるとは思えないけどね」

「アハハハ、レベッカさんのお気に入りのツインランサーが折れない事を祈ってるよ」

「「フフフフフフフフ」」


 二人共、意気投合したのか怪しい笑みを浮かべていた。

 二人を見ていた俺だがレベッカさんと視線があった。レベッカさんは慌てて手で胸元を隠す。いやいや、眼鏡かけているから大丈夫ですよ?


「レベッカ~、アベル君は眼鏡掛けているから大丈夫だよ~。それに隠しても隠さなくてもレベッカの胸は無いに等し『ポカ!』いたあ~い~」


 レベッカさんが隣の小さい女の子の頭をポカりと殴る。


「リリアン! 余計な事は言わない! だったら半分あなたの寄越しなさいよ!」

「あげませ〜~ん」


 リリアンさんと呼ばれた小さい女の子は、なんか入ってるの?ってぐらいに大きな胸を両手で持ち上げている。俺達男三人はその仕草に「ゴクリ」と生唾を飲んでしまうほどだ。


「んっんッ!」


 ミアさんが冷たい目で小さい声をだした。「そういう言えばアベルって」とミアさんが俺に話しかけてくる。


「そういう言えばアベルって剣の方はどうなの?」

「俺か? まあ山の中で獣や魔物とやり合ってはいたからボチボチだろ? それに弓の方が好きだしな」

「へ~、アベル君ってアーチャーなんだ」


 コレットさんが以外そうな顔で俺を見る。


「無用な接近戦をしたくないだけだよ。弓の間合いで仕留められるなら、そっちの方が怪我をしないからな」

「山育ちなの~?」


 リリアンさんが大きな胸で頬杖を付いて聞いてきた。その姿勢、なんかおかしくないか?

 俺はさっきリック達に話した村での出来事と山での生活を女の子達にも話した。


「アハハハ! アベル君って面白過ぎ~!」

「アハハハ! 失礼だよ~レベッカ~!」


 大笑いするレベッカさんとリリアンさん。ミアさんとコレットさんもクスクス笑っていた。


ピンポンパンポン♪


『1年3組のアベル君は大至急学院長室に来て下さい。繰り返します……』


 何? 俺? 大至急って何だ?


「アベル、また何かやったの!?」

「いやいやみんなと一緒にずっといたろ?」

「そ、そうよね……」


 俺とミアさんは目を合わせて首を捻った。


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