第10話 俺もやれば出来るってお話
今日から授業が始まった。
一限目は国語。山暮らしの中で婆さんから送られてきた本を読んでいた事もあり、授業にはついて行けた。
二限目は数学。婆さんから送られてきた数学の問題集とは少し違うが答えは分かる。良かった!
「この問題……アベル君、前に来て解いてみて」
……教科書とは解き方は違うが答えは分かるな。
「アベル、大丈夫? この問題難しいわよ」
隣の席のミアさんが心配してくれる。
「大丈夫だ。魔眼を使わなくても答えは分かる」
【計算式鑑定】の魔眼を使えば教科書通りの解答が出来るだろうが、今は魔眼を使えない。俺は前に出て俺が分かる計算式を使って答えを書いた。
「先生、これでいいですか?」
「あ、アベル君?」
「あれ?答え違いますか?」
「答えは合っているわ。計算式も間違いではありません。でも教科書通りの計算式が出来ていないわね……」
「そうですか……」
残念だ……。答えが合っているだけではダメとは数学は奥が深いな。
「先生! 私はアベルの使った計算式を知りません。なんか変な記号が入ってますけど?」
ミアさんが手を上げて先生に質問をしている。いいんだよミアさん。俺のやり方は間違ったやり方なんだからな。
「ま、まだ皆さんは知らなくていいです。この計算式は高等数学なのよね~。三年生で習いますから今は知らなくて大丈夫ですよ」
「えっ?」
「「「えええええ~~~~~~!?」」」
何故かクラスのみんなが驚いていた? 謎だ。
三限目の経済は全く分からなかった! やばい! 帰ったら勉強だ! 村にはこんな高度な経済社会は無かったらな!
◆
お昼ご飯は昨日と同じ八人で食べた。今日はB定食大盛りにしてみた。美味い!
午後からは一年生合同の技術教育となっていた。剣術、槍術、斧・槌術、格闘術、弓術、馬術、魔術(炎)、魔術(水)、魔術(雷・風)、魔術(土・光・闇)、白魔術、採取術、加工術、生産術、農耕術、学術、美術、社交等多岐に渡る技術を選考出来る。
但し午後の授業駒数は一週間十駒で一技術で週二駒以上は使わなくてはいけない。つまり多くても五技術迄しか選ぶ事が出来ない。
しかし今月は、クラス毎に決められた代表的な技術教育を受ける事となっている。今日、俺達三組は剣術と美術を学ぶ事になっていた。
◆
「遂に俺様が目立つ時が来たようだぜ!」
リックが矢鱈と張り切っている。武闘大会剣術部門少年の部で優勝した男だ。血が
剣術にも色々と流派が有るようだが、学院では剣術の基本に忠実な剣心流という流派を学ぶらしい。
行き成り剣を握るのかと思いきや、剣とは、命とは、死とは、心とは、魂とは等の座学から始まった。そしてリックは魂が抜かれた顔で授業を受けていた。
その後に剣の持ち方や構え、素振り等の基本を少し学んだ。
「時間も無くなってきたから経験者による実戦稽古をやる。やりたい奴は前に出ろ」
「はい! はい! はーい!」
師範先生の呼びかけに、リックが速攻で前に出た。次に出たのは背の高い男子、確かローランドだったか?
「槍使いが俺様に剣で勝てるとか思ってる?」
「やってみないと分からないさ」
二人は道場の真ん中で剣を構える。師範先生の「始め!」の声でローランドが凄まじいスピードの突きで突っ込んでいった。襲歩! 超高速歩行のギフトだ。
しかし瞬きの一瞬でローランドの剣は宙を舞っている。リックはローランドの攻撃を読み、高速の突きを下から剣で払い上げた。
「クソ~!」
「槍だったらヤバかったけどな」
ニヤリと笑うリック。あの速度に反応出来るんだからリックは凄いな!
「しかし消化不良だな~。アベル! 来いよ!」
俺かよ! 仕方なく俺は前に出る。剣を構えるとリックがニヤリと笑う。
「女の子達にもう一つ俺様の勇姿を見て貰おうかね」
「……そうそう上手くいくかな?」
俺もニヤリと笑って返してみた。師範先生の号令でリックが俺に襲いかかる。
上段からの連撃、中段、下段、突き、薙ぎ、小手、引き、出ばな、様々な剣を俺は俺の剣で受け続けた。
「流石は魔眼ホルダー。透視とはいえ目は良いようだな」
「これしか無いんでね」
俺は左右違った魔眼を使用する練習の中で、右目と左目で違う物を見る技術を得ていた。紫色の眼鏡を掛けているからリックにはバレてはいない。
右目は常にリックの目を見て、打ち込みの防御に徹する。左目はリックの顔、肩、腕、足等を観察してリックの癖を盗む。【見切り】の魔眼を今は使えないが、そのイメージがしっかりと頭の中に有る。リックの剣を自力で見切る。
「魔眼、使ってもいいんだぜ」
「止めとくよ。これ以上、女子の好感度を下げたく無いんでね」
「俺は使うぜ! 悪いが勝たせてもらう!」
リックの目に気合いが入る!
「ウエポンバァーストォォォ!」
リックのギフト武強が発動し剣が光る。武器の威力が格段に跳ね上がった筈だ。俺はバックステップで下がり一呼吸する。
レベッカさんから聞いたリックの得意技は武器破壊。今までのように剣で受けたら俺の剣は破壊される。だから俺は全ての攻撃を体捌きで躱すしかない。
リックが上段から斬り掛かって来たのを俺は躱す。右肘が浮いた、薙ぎだ! リックは返す刀で胴を薙いできたが其れも躱す。
左肩が下がった、斬り返しだ! リックが更に胴を薙ぐがバックステップで其れも躱した。
「………………」
正眼に構え直すリックの顔に焦りが見える。
「避けてるだけじゃ勝てないぜえええーーー!」
リックの猛攻が始まった。肘が上がった薙ぎ! 脇が空いた上段! 左膝下段! 右肩小手! 左手が開いた小手斬り返し! 俺は体捌きだけで全て躱す。そして半歩後ろに下がる。
「ぅぜえええええええーーーッ!」
苛立ちの声を上げるリック。
両膝が沈んだ!
俺はリックの高速の突きを右に躱し、サイドステップで側面に回り込む。その際に俺は剣を上段に振り上げ、無防備なリックの頭を狙い振り下ろした。
ピタッ!
寸止めで剣を止める。
「其れまで!」
師範先生が止めの声を上げ勝負は終わった。
「フゥ~」
「……ま、負けた……」
俺は安堵の息を吹き、リックは悔し涙を流していた。
◆
《夜ー女子寮ー女子会》
「ミアちゃん、アベル君は?」
「経済の勉強中。眼鏡外すからって退室させられた」
「アハハ、経済の授業は苦戦してたよねアベル君」
「でも数学は凄かったな。高等数学ってアベルは天才か?」
「チートよチート。今もチートスキルで勉強してるわ」
「「「チート?」」」
「アベルは派生スキルで【計算式鑑定】とか【文書鑑定】とか使えるんだって。ズルよ、ズル!」
「……ミアちゃん、其れを言ったらギフトはみんなズルだよ」
「……そうだけど」
「でもアベル君有りかも~」
「うん、今日のアベル君カッコ良かったよね」
「リックさんに勝てるなんて吃驚でしたわ」
「リック君の攻撃も凄かったけど、アベル君全部避けてたよね」
「カッコ良かったですわ~」
「「「うん!カッコ良かったよね!」」」
あ、あれ? み、皆さん?
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