第5話 ミアさんの胸のホクロが気になる?ってお話

「なあミアさん?」

「何よ!」

「この扉はなんだ?」


 俺は結局ミアさんと同じ部屋で寝泊まりする事になったのだが、二段ベッドの下が俺のスペースとなり、何故が鉄製のスライドドアが取り付けられ、更には鍵までかけられていた。


「私の許可が無い限り其処から出てこないで!」

「トイレは?」

「その時は許可するわ」

「夜中とかミアさんがいない時は?」

「我慢しなさい!」


 マジか? 全く信用されてないな俺! こんな鉄板は【透視 中】を使えば透けて見えてしまうが……うん、黙っておこう! 別に覗き見とかはしないしな。


 俺はベッドで横になり本を読むことにした。暗い中でも【暗視】を使えば本も普通に読める。……ふと気になる事があった。


「なあミアさん」

「何よ! トイレ!?」


 ミアさんは多分机に座り何かをしているっぽい。勿論透視は使っていない。声の方向が机側から聞こえるからだ。


「胸、痛くないか?」

「な、何よ! 胸を痛めるのは貴方の方でしょ! 少しは反省しなさい!」

「いや、そっちじゃなくて、ミアさんの胸に有る小さなホクロみたいなヤツ。それってメラマニン病じゃないか?」


 メラマニン病とは皮膚癌の一種で痛みが始まると急速に広がり始め、最悪死に至らしめる病気で有る。


 俺は山の中で怪我や病気を繰り返す内に魔眼スキル【診察眼】を開眼している。さっきのドタバタで見えてしまったミアさんの胸のホクロに違和感を感じていた。しっかり見ていないから確信的な事は言えないが、頭の中にメラマニン病がイメージ的に引っ掛かっていた。


 ガタガタと音がしてドタドタとなったらバタンと扉が閉まる音がした。走って何処かに行ってしまったみたいだ。……鉄扉の鍵、開けてけよな。



 あれからだいぶたったがミアさんは戻って来ない。「腹減った~」と呟くもベッドの中には食べ物も飲み物も無い。仕方なく横になり一眠りする。


 幾らか寝た頃にドアが開く音がして眼が醒めた。ガタガタと音がするので【透視 中】で鉄扉の外を見てみるとミアさんと学院長先生、それに白髪の老人が部屋に入って来たのが見えた。


 鉄扉の鍵が外れる音がしたので俺は慌てて眼鏡を掛ける。扉が開きミアさんが何故かモジモジした顔で俺を見ていた?


「ほら、ミア、お礼でしょ」

「は、はい。あ、あの……あ……アベル君……ありがとう」

「なんかあったか?」

「うん。私の胸のホクロ……メラマニン病だった……みたい。で、でももう直して貰えたから」

「そうか! 良かったな!」


 俺がそう言って笑ったら、ミアさんは赤い顔で俯きモジモジしてしまった。病の治癒魔法を施して貰ったようだな。

 すると学院長先生が俺の手を握ってきた。


「アベル君ありがとう! 妹の命の恩人よ!」

「えっ!? 其処までの事はしてませんよ?」

「いいえ! そんな事ないわ! 先生、説明を」


「君がアベル君か」


 白髪の老人が喋り掛けてきた。先生? お医者さんか?


「メラマニン病は気が付いた時には手遅れになる可能性が高い怖い病気じゃ。仮に治癒しても全身に黒い大きな痣が至る所に斑状に残る。助かったしても女の子には辛い病気なんじゃ。あんなに小さな核を良く見つけたね」


「チラってホクロが見えた時に俺の【診察眼】に引っ掛かったんです」

「し、【診察眼】じゃとおおおーーー!」


 急に白髪の老人が超大きな声をあげ、俺もミアさんも学院長先生もビクッとなって老人を見ていた。


「千人、いや一万人、いやいや十万人に一人いるかいないかの神眼じゃぞ! アベル君! 儂と一緒に働かないか!」


 興奮して鼻息がやたら激しい老人を学院長先生が「落ち着いて下さい先生」と宥めている。医者から見たら確かに神眼かもしれないが、診察眼ってそんなに珍しいのか? 魔眼自体が千人に一人と言われている。魔眼も種類が沢山有るからそうなるのか?


「先生、アベル君はあのエリミア様から預かった子なので、先生の頼みでも其れは出来ないんです」

「エリミア婆さんか……。なら仕方ないのぉ」


 たまに出てくるエリミア様って……俺の婆さんって何者? 全然知らないんだけど?


 ドタバタしたものの学院長先生とお医者の老人は部屋を退出した。


「なあミアさん」

「こ、今度は何よ!」

「腹減った……」

「…………そうね」



 俺とミアさんは二人して女子寮の食堂に入った。テーブルに座っていた女子生徒達が俺を見てザワついている。あの事件を知っている子は胸を隠していた。


「皆さん! ご紹介します」


 食堂にいた女子生徒全員が此方に注目した。


「まず私リムフィリア侯爵領の領主の四女、ミレリア・ル・リムフィリアです。ミアとお呼び下さい。皆さん宜しくお願い致します」


 ミアさんが綺麗に整ったお辞儀をする。女子生徒達が慌てて立ち上がりミアさんにお辞儀をした。


「そして、こちらアベル君。学院長の手違いでしばらく女子寮に住む事となってしまいました。もう既に知っている方もいらっしゃると思いますが、彼は透視の魔眼ホルダーです」


 事情を知らない女子生徒達がザワついて胸を手で隠したりしている。


「彼の付けている紫色の眼鏡は魔眼封じの眼鏡です。この眼鏡をしている間は透視で物を見ていませんのでご安心下さい。もし彼が眼鏡をしていない時は全力で逃げるか全力で殺して下さい」


 ニコっと微笑むミアさん。って殺すのかよ!


◆◆◆◆◆

【作者より】

バトル回が、11話、14〜16話になります。

コメディ多めですが宜しくお願いします


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