第2話 三年間の山生活で沢山スキルを覚えたってお話

 山小屋での生活は精神的に楽だった。村にいても眼福は全く期待出来ないし、狙ってやったら犯罪者だ。山の中ならそんな事を考えないで生活出来る。婆さん達のアレも見なくてすむ! コレ超重要!


 山では獣や鳥を狩り、山菜を採り、魚を釣って生活していた。たまに魔物に襲われ、魔物から逃げて、時には魔物を倒し、剣や弓の技術も日々向上していた。


 ある日、俺の魔眼がスキルを覚えた。ギフトが派生スキルを生むケースがある。例えば友達トーマンの速歩は疾歩、襲歩とレベルアップするし、ミーシャの炎護は炎系魔法のレベルで加護も大きくなっていく。


 俺の魔眼【透視】は派生魔眼をスキルとして覚えて行くようだ。ギフトとスキルの違いはギフトは魔力を消費しないが、スキルは魔力を消費するので一日辺り使える回数に制限がかかる。


 初めて覚えた魔眼スキルは【薬草鑑定】だった。日々の山菜採りで食べれる草、毒のある草、ただのペンペン草、更には薬草等を採取する事で開眼したらしい。


 次に覚えたのは【見切り】だった。凶暴な獣や魔物との戦闘で相手の動きを試行錯誤していた事で開眼した。更には【急所】も開眼した。


 【急所】を覚えてからは弓矢での狩りや戦闘が多くなった。接近戦よりもリスクが少ないからな。弓矢で遠くから獲物を狙っていたら【望遠】も開眼した。


 ギフトの【透視】も布切れぐらいしか透視出来なかったが、スキルとして【透視中】【透視大】が開眼した。【透視大】だと山の裏側迄見える様になった。


 月に一回程度は婆さんが人を使って日用品や勉強の為の本を山小屋に届けてくれた。その甲斐もあって【韋編三絶いへんさんぜつ視】なる勉強に役立つ魔眼スキルも開眼した。【韋編三絶いへんさんぜつ視】は同じ本を何度も読む事によって難しい本でも理解出来るという謎の魔眼スキルだ。


 俺はこの山の中で三年間を暮らし魔眼スキルも【獣鑑定】【魔物鑑定】【鉱物鑑定】【水質鑑定】等の鑑定スキル、【近接眼】【広角眼】【暗視】等の視界スキル、戦闘に役立つ【加速視】や【未来視】も開眼した。


 俺のギフト【透視】はひたすら見続けている為か、見る系の派生魔眼スキルが開眼しやすいようだった。


 左右の眼で異なる魔眼の同時使用にもチャレンジした。世界がゆっくり動いて見える【加速視】と【急所】を併用する事で、獣や魔物との近接戦闘もかなり楽になった。


 そして三年目の白い雪が解け、暖かい春を迎えた頃に婆さんから手紙が届いた。


「オレッドさん、これは?」


 オレッドさんは山小屋に物を運んでくれる近所のおじさんだ。俺はお礼にいつも獣の毛皮や牙、薬草等を渡している。


「エリミア婆さんがアベルに渡してくれって渡されてきたぞ」


 俺は手紙を開けると中には【王立リムフィリア学院入学推薦状】と婆さんからの手紙が入っていた。手紙はどうやら俺に学校に行けって事らしい。


「それからこれも渡された」


 オレッドさんから渡されたのは紫色のレンズが付いた眼鏡だった。手紙にも書かれていた耐魔眼眼鏡だ。耐魔眼眼鏡は魔眼に対抗する為に作られたレアアイテムで、俺の場合は自分の効果を抑える魔眼封じの効果が有るみたいだが。


 魔眼封じの眼鏡をかけてオレッドさんを見てみると、今までスッポンポンに見えていたオレッドさんが服を着ていた!


「おおお~! オレッドさんが服を着ている!」

「アホか! 当たり前だろ! マッパで山を登るアホがいるか!」

「凄いなコレ!」

「だいぶ高かったみたいだぞ。大切に使えよ」

「ああ、分かってるよ」


 婆さんありがとな!


 そして、俺は三年ぶりに山を降りた。

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