05:お兄様
今年二十五歳になるお兄様はとっくに適齢期を迎えている。そんなお兄様は私と同じお母様譲りの明るい銀髪にお父様譲りの甘い顔。その上婚約者なしの侯爵家嫡男と言うハイスペックっぷりを見せているわ。
おまけに妹の私が将来は王妃になるというから、その人気は拍車を掛けていて、今まで以上にお見合いの申し込みが増えたそうよ。
今では社交界一の優良物件と言う噂になっているの。
でも残念。
お兄様は妹に上げたお菓子の銘柄と日付を、事細かに暗唱できるほど重度なシスコンなのよね。
シスコンなお兄様は私以外に興味がないから、数多の婚約者候補を『気に入らない』の一言で斬り捨てていたみたい。
でも最近はそれすらも無くなった。
なぜなら私が新たに婚約してしまったから、お兄様はすっかり無気力で、塞ぎ込んでしまい、もはや笑顔を浮かべる事も無く日々暗い表情で過ごしている。
私からすると仕方がないなと思わないでもない。でもね、私の中にあるジルダの記憶では、お兄様はシスコンじゃなくて尊敬できる素敵なお方だったはずなのよね。
どうしてこうなったのかしらね?
まあいいわ。
とりあえずいまのお兄様に私が何が出来るかと言えば、なるべく視界に入らないように~と、このくらいかしら?
いい加減、両親からの愚痴を聞き飽きたとか、そんな事は思ってないわよ。
ふぅお兄様にも春が来ると良いのだけど。
でもね、お兄様の重度のシスコンと言うのは、とてもとても問題なのよ。
正直な話、私からすればロリコンの方がよっぽどマシだと思っているわね。
勿論これは性癖のダメさ加減の話じゃなくて、替えが聞くと言う単純な意味だけの話よ?
シスコンはお兄様からすると唯一私しか居ないの。
つまりオンリーワンよ。
私たちは二人兄妹で、私のほかに妹はいないからこれは仕方が無いわよね。
でもロリコンだったら他にも候補がいるじゃない。
幼女が育った将来はどうするって? 私は結婚した後まで責任は取れないわよ!
いいえ、違う! そうよ思い出したわ。
生前に従兄のお兄さんがお見舞いにと持ってきてくれた、とっても薄っぺらい本で、『合法ロリ』っていう言葉が出てきたけど、それなら問題解決よね。
だって合法なんですもの!
あっ駄目よ。
だってお兄様はロリコンじゃなくてシスコンだったわ。
ああ。そう言えば別の薄っぺらい本にもう一つ言葉があったわね。
確か……『血の繋がった妹なんているわけない』、だったかしら。
一体どういう意味なのかしらね?
普通の妹だったら血が繋がっているは当たり前だと思うのだけど。
合法ロリと一緒に、従兄のお兄さんが物凄く熱く語ってたから、きっと似たような意味だと思うのだけど……
つまり、その血の繋がった妹じゃない子を探せばいいのよね?
でも本当にそれはどういう存在なのかしら……
私じゃない、血が繋がっていない私?
それはただの他人よね……、妹じゃないと思うのだけど。
あの時、従兄のお兄さんは何て言ってたかしら、う~ん興味が無くて聞き流したのが失敗だったわ。
もっとよく聞いておけば……、とても残念だわ。
※
とある学園での休み時間。
「ねえリアーヌ。『血の繋がった妹なんているわけない』ってどういう意味か解るかしら?」
呟く様に私がそう聞くと、リアーヌは顔を真っ赤に染めて、
「ジルダお姉さまもそう言う趣味がお有りだったのですね!」
私の手を両手でガシっと握り締めてきたわ。
なんだかリアーヌがとっても嬉しそうなのだけど、どうしたのかしら?
そしてこの手を振り払った方が良い気がするのはなぜかしら?
そんな私の葛藤を無視して、まるでどこぞの婚約者のようにずずいと擦り寄ってくるリアーヌ。
うっ近いわね……
彼女の豹変っぷりに若干気圧されながら、
「どこかで聞いた言葉なんだけど、意味が分からなくて困っているのよ」
生前とか余計な事を言わずに、素直にそう言うとリアーヌの表情は少々がっかりした感じになっていたわ。
どうかしたのかしら?
少し気落ちした表情を見せているけど、リアーヌは私に分かるように教えてくれたわ。
「えーと、血が繋がった妹とは結婚できませんよね?」
「えぇ当然だわ」
「じゃあ血が繋がっていない妹はどうでしょう?」
「血が繋がっていない妹が居るわけないじゃない」
「実に惜しいですわ、ジルダお姉さま。言い方が逆ですの……」
「?」
「血が繋がっていないと言うことは異母兄妹ではなく、養子や連れ子という関係の妹のことですわ」
「あぁなるほどね! リアーヌ貴女って天才ね!」
聞いてみれば普通の話じゃないの! なんで変な言い回しをするのかしらね!
お陰で解り難かったじゃない!
リアーヌのお陰で、ついに発見した『血の繋がっていない妹』の存在を知って、私は凄く興奮していた。
その興奮冷めやらぬままに、
「早速、お父様にお願いしてくるわ!」
凄く叱られたわ……
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