03:双子の恋の物語
王太子の婚約者になった私は、王妃様に呼ばれて王宮に来ていたわ。
王妃様の用件は、
「実は貴女たちは婚礼まで期間が長いのよ、だから未だ婚約者なのだけど、この度正式に親衛隊を組織する事になったわ」
と、将来の
なお規模は正規の数ではなくて半数らしいわね。
確かに王妃様が仰る通り、私とフェルは婚礼までの期間が長いのよね。
フェルとの婚礼の時期は彼が学園を卒業した後と決められているから、今から三年後になっちゃうのよ。
我が家は侯爵家なので、お爺様が仮病を使って急に呼び出さなければ、私兵も多くて警護は多いのだけど、万が一間違いがあると駄目という事で今回の話になったそうよ。万が一って言うのはもちろんマエリスの起こした誘拐事件のことよね。
ちなみにお爺様は、陛下に呼び出しされて叱責された挙句に、ライバルだった前宰相から散々に馬鹿にされたみたいね。
「いっそのこと婚礼を先に結んでしまえれば良いのだけど……」
いやいや何を言ってらっしゃるのですか?
それは法律の話ですからね、ちゃんと守りましょうよ!
もちろん言わないわよ?
「う~んいっその事、王宮に住む?」
「いえ、それはちょっと……」
確かに王宮なら安全なのだろうけどもっ!
でも私の周りにフェルと、……たぶん王妃様がうろつきそうで困るわよね?
そんな訳で、私の年齢に近い若めな女騎士から、親衛隊を選ぶ事になったのよ。
親衛隊なので、当然ながら直接私が連れる護衛になるわね。なお屋敷を警護する近衛兵は男女問わず勝手に選ばれていて、うちの私兵と協力してすでに警備に入っているそうよ。いつの間にって話よね~
そして王妃様の親衛隊から借りていた双子の護衛メレーヌとイレーヌは、今回の件で正式に私の親衛隊に転属になったわ。しかも隊長と副隊長ですってよ、前回の私を助けた功績が認められたと言う話みたい。
「これからもよろしくね、メレーヌ、イレーヌ」
「「はい、こちらこそ!」」
久しぶりのステレオだったわ。
親衛隊に配属されても双子の任務は変わらず、引き続き学園で私を護ってくれるみたい。そして学園には双子以外にも年若い近衛兵が数人ほど混じっているんですって。
悪目立ちしない様に今年の新入生に混じって入ったそうなのだけど、どれだけ童顔なのかしらね?
それともアントナン殿下の護衛みたいに、違和感バリバリのガチな人なのかしら。
その日、私は親衛隊を選びに騎士団の事務所へと向かったわ。
王妃様曰く、『親衛隊は常に近くにいるのだから、人となりが一番大切よ』だそうよ。だから自分の目で見て決めなさいと言う事だった。
王妃様から自分で決めるように言われたことと、また
私は別の騎士に案内されて事務所に入ると、書類を見ながら実際にその人に会うというまるで面接のような事をしていた。
選ぶ人数を私が気にする必要はないそうで、気に入った人にレ点を入れておく。規定人数よりも多ければ身分とか家柄で抽選、少なければ騎士団の推薦から抜粋するみたい。
三時間ほど掛かって私の親衛隊が決まった。
私は顔見世の為に双子が向かったという訓練場に向かった。
ちなみに「自分が呼びに行きます」といった親衛隊の女騎士を制して、見学ついでに歩いてきたわ。
もちろん一人じゃなくて、まあ後ろに数人いるんだけどね。
訓練場にたどり着くと確かに双子は居た。しかし双子は金網のところに張り付いているだけで、どう見ても訓練をしている様子は無かった。
その金網の中、つまり訓練場の中では一人の男の騎士が一心に剣を振っていた。
ジャガイモが居るわ……
前世の少年漫画にいた、丸刈りの無骨な風体。つまりキャッチャータイプの奴よ。
それを双子が目をキラキラさせながらじぃーと見つめている。時折興奮気味に頬を赤く染めているのだけど……
ゴシゴシと目を擦りもう一度見る。双子はやっぱり頬を染めていた。
見間違いじゃないわ……
いいえ待って。今度はじぃと金網の中を、目を皿の様にして隈なく調べる。
しかしその場に居るのはジャガイモ一人。
その間も双子の視線は彼に釘付け。人の趣味は千差万別とは言え、双子の好みタイプが揃ってジャガイモというのは少し驚いたわね。
「あ、あの二人とも?」
「「はい、なんでしょうか?」」
振り向いた二人は頬を染めていないのだが、まだ後ろが気になるようで何だかそわそわしていた。
「いえ、なんでもないわ。ところで彼は?」
「「騎士団の同期です」」
なるほど、同期なら仲が良いのも分かるし、双子とは知り合いだったのだ。
きっとジャガイモは相当性格が良いのね!
人は顔じゃなくて性格なのよ! と、銀髪の見てくれが可愛いらしい王子を選んだ私にはとても言えなかったわ。
どの口がそんな事をいうってのよ!?
まぁ当人が気に入っているのだから……
少しだけお手伝いをしようかしらと、思った私は。
あれ、双子って二人よね?
いや頭が急に馬鹿になったわけじゃないわよ。
双子が二人なのは至極当然の話なのだけど、相手のジャガイモは一人なのだ。
つまり私は一体、どちらに手を貸すべきなのか?
「……」
「「どうかしましたか?」」
「いえなんでもないわ……、また来るわね」
そう言うと双子は「「はい」」と言うや否や、後ろを向いてジャガイモ鑑賞を再び始めたのだった。
双子と十分に距離を取った所で、後ろに続く親衛隊に声を掛けたわ。
「いま剣を振っていたジャガイモの名前を調べて頂戴」
「ジャガイモですか、ジルダ様は上手いことを仰いますね」
上手いことって言われてもねぇ、あれを他にどうやってたとえるのかしら?
その後は時間をずらして双子を呼んで貰い親衛隊のメンバーを紹介してから、改めてジャガイモの報告を聞いた。
「彼はマニュエルと言う代々騎士の家系の長男でした。
特に派手は噂も無く、女性関係も問題ありません。真面目で実直なので上官からの覚えも良いようです」
あらあのジャガイモ、思ったより優良物件ね。
「ありがとう。助かったわ」
帰りの馬車で、
「あの剣はとても素晴らしかったね」
「うん、凄い業物だったよ!」
興奮気味に話す双子、その話題は剣のようだが……
ジャガイモの名前が『ケン』なのかしらって、違うわよマニュエルって名前よ!
「えーと、二人ともそれはマニュエルさんの話よね?」
「「はいそうです。彼の持っていた剣が凄い業物で、思わず見とれてしまったんですよ」」
「あ、そう。剣にね、へぇぇ」
とんだ勘違いに思わず赤面したわ。
その後、前回助けて貰ったお礼にと、業物の剣を褒賞で与えて貰えるように、王妃様にお願いしたの。
剣を貰った二人はとても喜んでいたわ。
「ところで二人はどういった男性が好みなの?」
「わたしを軽く持ち上げてくれるようなたくましい人ですね」
「えーっ、姉さん趣味が悪いなぁ。ボクは線が細い学者タイプの方が断然いいよ!」
持ち上げて欲しい方と持ち上げたい方、どうやらお互いの趣味は違ったみたい。
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