第22話 定期試験③ 月下の剣士
班分けが終わり、各班ごとで馬車に乗っていた。
そして今、シオンも決められた班員と共に馬車に乗っている。
しかし、その班員が余り関わったことがない生徒だったので、どうしようかと悩んでいた。
馬車はそれほど大きくなく、シオンの横に一人、対面に二人が座っている状態だ。
「ねぇ、何か話さない?」
気まずい空気に耐え切れず、シオンは口火を切る。
だが、
「私は馴れ合いなどしない」
「えぇ…」
そう言って拒否したのはシオンの横に座っている、女子生徒。
彼女はクロエ・シュルガス、六席。
長い黒髪をポニーテールにしており、その厳格な言動でクラスでも浮いていた。
チラッと目線を前に向けると、
「あ、あの、僕もいいです…」
「あたしもめんどいからいいや」
前髪が目までかかっている気弱そうな男子生徒、ノア・フルトンと、令嬢とは思えない言動をする女子生徒、フレイヤ・ベルガモットの二人も拒否する。
(この面子で試験するの…?)
協調性の欠片もない班員に、これからのことを考えると頭が痛くなるシオンだった。
あれから何度か休息をとり、遂に野営地に着く。
因みにあれから会話はゼロだ。
流石のシオンも打つ手がなく、諦めるしかなかった。
「一回集まれー!」
フィオナ先生が集合をかけてたので、皆ぞろぞろと集まりだす。
「ここで各班それぞれ諸々の野営の準備をしてもらう!しっかりと協力してやれよー!道具とかはあの馬車にあるからなー。じゃあ解散!」
その号令と共に皆一斉に動き始める。
が、その中でピクリとも動いていない班があった。
「ねぇ…準備しようよ…」
シオンの班だ。
そしてシオンが準備をするよう促すが、
「ふん…各自でやればいいだろう」
「えー…」
「テキトーにやればいいじゃん」
「えー…」
「え、えっと…」
「行こう!ノア!」
クロエとフレイヤのことは無理だと瞬時に判断し、まだ可能性のありそうなノアを強制的に連れ出した。
「じゃあノアはこれとこれ持ってね」
「う、うん…」
ノアにいくつかの荷物を渡し、シオンもそれ以上の荷物を持つ。
「ごめんねー、いきなりで」
「い、いや、大丈夫だよ…」
クロエとフレイヤは自分でやるのでそれはそれで楽なのだが……、流石にこのまま試験に突入するのは不味い。
どうしたら少しは協力をしてくれるか、シオンは考えるのだった。
深夜、シオンは目が覚めてテントの外に出た。
「うわ…」
出た瞬間、シオンは素で驚く。
シオンが見たのは、月下で舞う一人の少女の姿。
クロエだ。
動き回りながらも、剣を構え、振る、その美しい剣舞にシオンは暫し見入ってしまった。
「はっ、はっ、ふぅー……」
十数分後、クロエは動きを止めて剣を鞘に収める。
そして振り返った瞬間、固まった。
「なんでお前がここにいる。シオン・フォードレイン」
睨みつけながら言う。
「いや、目が覚めちゃってね。そしたらクロエが剣舞をしてたから見入っちゃったんだよ。あとシオンでいいよ」
「……まあいい、さっさと寝ろ」
そう言い放ち、クロエは離れようとするが―――
「ちょっと待って」
シオンが呼び止めた。
「なんだ」
「何でクロエは何でも一人でやろうとするの?」
このタイミングしかチャンスがないと、シオンは腹をくくる。
「…私に馴れ合いは必要ない」
「いや、馴れ合いとかじゃなくて。このままだといい成績取れないんだけど」
シオンの予想ではもう試験は始まっていると考えていた。
だから、このままバラバラの状態だと危険なのだ。
幾秒の後に、クロエが口を開く。
「信用ができない」
「俺たちがってこと?」
「そうだ」
信用ができない。
この言葉を口にした時、僅かにクロエから負の感情が出ていたのに気づく
「どうしたら信用できる?」
シオンは単刀直入に聞く。
「剣だ」
「え?」
「私と剣で勝負しろ」
「・・・え?どゆこと??」
クロエの意味不明な発言に、脳が一時的に機能しなくなったシオンであった。
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